ぼくたち2人は、同じ果実を持つ同じ生き物だった。
ノンケの親友とゲイのぼくは、同じ果実を男同士で触り合って同じ快楽と幸福を感じた
目次
・大学時代、ぼくはノンケの同級生の男の子に片思いしていた
大学時代、ぼくは同級生の男の子に片思いしていた。彼が同性愛者ではなく異性愛者(ノンケ)だということは明白だった。男子校出身でまだ童貞の彼は、初めての彼女を作ろうと必死になっていた。彼の部屋の本棚には男性向けのエッチなDVDがいくつも並べられていたし、携帯の中の画像や動画は女性の裸体で満たされていた。彼がぼくを好きになってくれないのは明白だったし、ぼくの片思いが叶うはずもなかった。ぼくは彼が心から欲しいと本能から求める肉体を持ち合わせてはなかった。ぼくはただ彼と同様の肉体しか持っていなかった。
・ぼくは好きなノンケに膝枕してもらうのが幸せだった
ぼくは思いが叶わないことはわかっていても、彼に近づきたいという願いを抑えることはできなかった。それでもぼくができる精一杯のことは、2人きりの時に友達のじゃれ合いのフリをして彼に膝枕をしてもらって甘えるくらいだった。彼の膝で眠ることが、ぼくに許された最大限の幸福だった。
膝枕をしてもらっている時、彼の果実がよくぼくの頭に当たっていた。テレビで可愛い女の子が出たりすると、若く青い彼の果実はすぐに反応して固く膨張し鼓動していた。彼は照れ隠しのように、ふざけているように、その鼓動をぼくの頭にわざと伝えてきては遊んだ。ぼくが気づいてからかうと、彼はふざけてぼくの顔を無理矢理に服の上から彼の果実に押し当てて遊んだ。ぼくはそれが嬉しかったけれど、好きな気持ちを悟られないように嫌がっているそぶりを見せた。
2人はまだ、ただの親友だと呼ばれることを許される範囲の関係だった。
・ぼくが告白すると彼もぼくのことを「好き」と言ってキスしてくれるようになった
やがてぼくが好きな気持ちを我慢できずに告白すると、彼もぼくのことを「好き」と言ってくれるようになった。ぼくたちは会うたびに「大好き」と言いながら抱きしめ合うような関係になった。膝枕して甘えて、髪を撫でて、「好き」と告げ合って、キスをして、抱きしめ合って、手を繋いで一緒に眠った。ぼくの肉体を求めるはずのない彼が、ぼくの何かを求めてくれていることは明白だったけれど、それが何かはよくわからなかった。彼が毎日夢想して最も求めているはずの女性の肉体をぼくは差し出すことができないのに、ぼくと彼が求め合うようになったのは理由のつかない不思議な関係だった。
ぼくは最初、ぼくの中に潜む女性の精神のかけらを彼は見出し、それを求めているのかもしれないと感じた。けれどそれだけではないことが、次第に2人の関係の中でわかり始める。人間の肉体を求めるという欲望は奥深く、不可解で、意味深だ。彼が男性の肉体を持ち、いつも女性の肉体を夢想しながら自らを慰めていることは明白であっても、だからと言って彼の人生の中で、女性の肉体ではないもうひとつの方を実際に求めることがないとは限らないのだった。ぼくは彼の欲望の中に、計り知れない人間の奥深さと神秘性を感じた。
・ノンケの親友とゲイのぼくは、同じ果実をお互いに触り合って同じ快楽と幸福を感じた
彼は次第にぼくの果実を衣の上から触って遊ぶようになった。大好きな彼に触られたぼくはすぐに反応し、彼を喜ばせた。彼はいつもぼくに、2人の持っている果実の名前を呼ばせた。ぼくが恥ずかしそうに照れながら2人の果実の名前を呼ぶことに、彼は喜びを見出していた。続けてぼくの果実が彼の手の中でどうなっているのかを、ぼくに敢えて言わせるのだった。
彼はぼくの果実が反応しているのを衣の上から感じ取ると、嬉しそうに笑ってぼくの果実をいつまでも弄んだ。彼は男性の果実の感受性を知っている。なぜなら彼自身、男性の果実を持っているからだ。ぼくたちは異なる人間だと思っていたけれど、全く同じ男性という野生の動物だった。彼はぼくがどうすれば喜ぶのかを最初から知っていた。それは彼が自分自身の果実で快楽を得る方法を、ぼくに適応したからだった。彼がその果実を自らで慰める時に見出した快楽の追求で、今度はぼくが果実の野生の快楽をもたらされていた。
肉体がつながり合うことはなくても、彼がぼくの果実を衣の上から触っているだけで、ぼくたちはまるでつながり合っているような幸福感に満たされた。彼の手によってぼくの果実が快楽を得ている時、それは彼の手によって彼の果実が快楽を得たいくつもの過去の日々を意味していた。ぼくの果実の快楽は、彼の果実の快楽にそのままつながっていく。そのことをとても愛しく、尊いと感じた。
ぼくが彼の果実に手をのばすと、彼の果実はいつも熱く鼓動していた。ぼくは彼がぼくにしてくれた触り方を思い出し、真似して彼の果実で遊んだ。それが彼の一番好きな方法だと知っていたからだった。彼は自分の果実を触る最も好きな方法で、ぼくの果実を触ってくれた。ぼくは彼が最も好きな方法を、今度は彼自身の手ではなくぼくの手でもたらそうと慈しんだ。彼は喜びを表すためにぼくの手の中で果実を鼓動させた。彼の手の中でもぼくの果実は我慢できずに鼓動し、濡れていた。彼はいつもそれを感じ取っては、ぼくをからかって遊んだ。
ぼくたちはいつも同じだった。同じ肉体を持ちながら生まれ、同じ果実を大切に隠しながら生きていた。誰にも触らせることのなかったお互いの果実を、たった2人の秘密の部屋の中、今お互いに慈しんで同じ幸福を感じていた。果実を持っているという秘密、それが熱く鼓動するという秘密、それを自らで触っていたという秘密、それによって快楽を得ていたという秘密が、2人を固く結び合って離さなかった。同じ果実を持っているんだというわかりきった秘密を、生まれて初めて誰かと共有し、確認し合った。
ぼくたちは同じ果実を持っていることを、尊いと感じていた。同じ果実を持っているからこそ、お互いに全ての感受性を分かち合い、自らの果実を触るようして、相手の果実を大切に慈しんだ。ぼくの果実は彼の果実で、彼の果実はぼくの果実だった。果実はすべて同じだった。ぼくたちは根源で結ばれていた。ぼくはぼくの果実を触るし、彼は彼の果実を触るだろう。それと同じように何の疑いもなく、彼の果実はぼくのものであり、ぼくの果実は彼のものだった。
2人の肉体は2つではなく、たった1つだった。本当は1つの肉体が、誤って2つに分かれていただけだった。本当は同じ肉体だったことが、お互いの果実で遊んでよくわかった。ぼくがぼくの果実を触って幸福を感じるところは、彼の果実についても同じことだった。彼が彼の果実を触って快楽を得るところを、ぼくの果実に当てはめて同じ快楽をもたらしてくれた。ぼくたちの果実は同じものだった。ぼくたちの果実はひとつだった。2つに分かれているように見えるものは、真理の世界ではたったひとつだった。異なる肉体を貪り合うことで、どうしてこのような悟りが開けるだろうか。
ぼくたちは同じ肉体を持ちながら、同じ果実で遊んだ。同じように鼓動して、同じように熱くなり、同じように濡れて、同じように青い液体を解き放った。違うところなど何もなかった。ありとあらゆるものが異ならなかった。ぼくと彼は同じ人間だった。それを2人は、誰にも知られないよう密かに確かめ合った。もはやどんなに2人の肉体が離れようとも、ぼくたちは同じ炎の音を聞くだろう。いつだってつながって生きられるだろう。ぼくはあなたで、あなたはぼくだった。ぼくたちは畢竟、ひとつだった。
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