父親のセリフが感動的!同性愛映画「君の名前でぼくを呼んで」が魅力的な7つの理由を考察

 

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父親のセリフが感動的!同性愛映画「君の名前でぼくを呼んで」が魅力的な7つの理由を考察

・「君の名前でぼくを呼んで」を偶然機内で見て感動した!

「君の名前でぼくを呼んで」という映画を、台湾から日本へ帰る途中のJALの機内で見た。暇だから見ていただけで何も期待していなかったのだが、あまりの美しさとぼくの感性に共鳴しすぎて、最後の最後には泣いてしまうほどに素晴らしい映画だった。この映画の何がそんなに素晴らしいと感じたのか、その理由を自分なりに分析してここに書き記そうと思う。

 

 

・「君の名前でぼくを呼んで」のあらすじ

「君の名前でぼくを呼んで」の舞台は1983年の夏、北イタリアの避暑地だった。大学教授を父にもつ17歳のエリオの家に、24歳の大学院生のオリヴァーが助手としてアメリカからやって来て、夏の間だけ共に暮らすことになる。エリオとオリヴァーは一夏の共同生活の中で、お互いに心惹かれ合うようになる。男同士の恋愛感情であるだけに最初は戸惑ったり反発し合っていた2人だが、次第に素直な思いが溢れ出し、最終的には結ばれる。しかし夏の間だけ北イタリアに滞在すると決まっていたオリヴァーはアメリカへ帰国し、夏が終わればエリオと離れ離れになるという切ない運命を背負っていたのだった。

 

・美しい南欧の風景だけでこの映画を見る価値がある

 

「君の名前でぼくを呼んで」は、なんと言っても夏の北イタリアのその風景だけで美しい。夏の光が降り注ぎ木漏れ日あふれるのどかな日々、薄緑の自然と遺跡の中に流れる清らかな水と戯れる時間、歴史を感じせる古代からのイタリアのベージュの街並みが、映画の全体に渡って映し出され、その美しい風景を鑑賞するだけでもこの映画を見る価値は十分にある。映画のどの瞬間を切り取ってもまるで構図が精密に練られた絵画のように美しく、様々な風景画が次々と目の前で変化していくようだ。

 

ストーリーの軸自体は単純でそうかそうかと流す感じで見られてしまうが、その軸を取り巻く光あふれる夏の南欧の風景があまりに美しいので、いつまでも飽きることなく見入ってしまう魅力を解き放っている。ぼくはヨーロッパを旅していても夏の南欧が最も好きだった。特に南フランスの光が好きだったが、南フランスと北イタリアは同じ緯度で繋がっているので、ぼくの好みの光と一致していたと思われる。とにかく南欧の光は美しい!

 

・美しいギリシャの男性裸体彫刻

 

ヨーロッパの美術館を巡っていても、ぼくが好きなのは絵画などではなく古代のギリシャ彫刻だった。「君の名前でぼくを呼んで」でも冒頭から神秘的なギリシャ彫刻がいくつも登場して感性をくすぐられる。ギリシャ彫刻は男性のチョイスしかなく、監督が女性の肉体に全く興味がないことが示唆されていて面白い。

 

 

エリオの父親が考古学の教授らしく、みんなで北イタリアの湖に出かけて行って湖の底から美しい裸体彫刻が引き上げられた場面は神秘的で感動的だった。それはもちろん男性の彫刻だった。ギリシャ彫刻からは古代ギリシャの同性愛的、少年愛的な雰囲気が示唆される気配もある。

 

また彫刻だけではなく、エリオもオリヴァーも映画の中でよく裸になっていた。夏の南欧の光の中では、何の衣も身にまとわないほうがむしろ自然で似つかわしい風景だと感じられた。

 

・南欧の光の中の実った果実がただただ美しい

 

南欧の光の中で、果実がいくつも実っている風景も美しくてまた魅力的だった。このブログを昔から読んでくださっている方なら知っているかもしれないが、ぼくは果実が好きなのだ。一番好きな食べ物は何かと聞かれたら、ぼくは桃だと答えるほどだ。この映画の中ではアプリコットが目立たない隠れた要素として、映画全体にみずみずしい感性を印象付けている。

 

17歳のエリオが庭で実ったアプリコットを使って自分自身を慰めるシーンも、卑猥というよりむしろ南欧の光の中でただただ美しい。

 

・BGMが芸術的で映画の情緒をより一層豊かにする

映画全体に流れてくるピアノのBGMもまた清らかで懐かしい情緒を生み出し、光あふれる南欧の風景と共鳴して感動的な化学反応を起こしている。エリオが芸術的で繊細なセンスを持っており、ピアノで演奏したり編曲したりしている風景も魅力的だ。ピアノの他に流れる映画のBGMも、映画全体に流れている雰囲気に沿っていて光が瞬くように美しい。特に主題歌にもなっているSufjan Stevensの”Mystery of Love”,”Vision of Gideon”,”Futile Devices”はこれ単体で聞きたくなってしまうほどの感度の高さだった。

 

・エリオのファッションが素敵

音楽だけではなくファッションも魅力的だと感じた。ぼくが実際にヨーロッパを旅行していても、最もおしゃれな男性が住んでいると思ったのはイタリアだった。エリオがいつも履いている孔雀柄のパンツが可愛い!

 

 

・詩的なスタイルで究極の愛が表現されている(「君の名前でぼくを呼んで」の意味考察)

エリオとオリヴァーが愛し合うとき、オリヴァーがエリオに向かって「君の名前でぼくを呼んで、ぼくはぼくの名前で君を呼ぶよ」と告げる。つまりエリオはオリヴァーに向かって「エリオ!」と呼び、オリヴァーはエリオに向かって「オリヴァー!」と呼ぶのだった。ここ書いただけだと意味不明だが、ぼくはこの詩的な愛の表現が好きだった。

愛し合うということは、「私」の「あなた」の間の境界線がなくなり、私もあなたも同じ人間になってしまうということではないだろうか。ぼくには「ぼくの名前で君を呼んで」という提案が、自我さえ失った先に見える究極的な愛の形の表現として適切だと感じられた。

 

 

・詩的で意味深い父親の言葉が感動的

映画全体を見渡してみても、ただただ美しく、繊細で、芸術的な作品だっとたということで終わりそうなところ、最後の最後でエリオのお父さんの意味深い言葉に完全に魅了され、涙を流すほど感動してしまう。エリオのお父さんはエリオとオリヴァーの愛に気がつき、オリヴァーがアメリカに帰ってしまって深く悲しんでいるエリオに向かって思慮深い魂の言葉を投げかける。このお父さんの一連の言葉たちが詩的で、哲学的で、意味深く、心の底から感銘を受けずにはいられない。

賢いお前にはわかるだろう
稀有で特別な絆ということが

お前と彼の間には
知性だけではない全てがあった
彼は善良だ
お互いを見出せて幸運だった
お前も善良だから

思ってもいない時に
自然は狡猾な方法で人の弱さを見つける
そんな時はわたしがついてる

今は何も感じたくないだろう
2度と感じたくないかも
それにこういう話をしたいのは私とではないだろうが

お前は確かな何かを感じた
お前たちは美しい友情を得た
友情以上かもしれない
うらやましく思う

多くの親は早く終わらせたいと願い
息子が冷静になることを祈る
私はそういう親ではない

人は早く立ち直ろうと自分の心を削り取り
30歳までにすり減ってしまう
新たな相手に与えるものが失われる

だが何も感じないこと
感情を無視することは
あまりに惜しい

もう一つ言おう
よりわかるだろう

私は逃してしまった
お前たちが得た経験を
何かが常に私を抑えた
また妨げたのだ

お前の人生はお前のものだが
忘れるな
心も体も一度しか手にできない
そして
知らぬうちに心は衰える
肉体については誰も見つめてはくれず
近づきもしなくなる

今はまだひたすら悲しく苦しいだろう
痛みを葬るな
感じた喜びも忘れずに

あまりに美しい南欧の風景と感性だけでもこの映画を見る価値が十分にあるが、もっと価値のあるものは、映画の最後に解き放たれるお父さんからの言葉たちだった。

 

 

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