この世にいらない子なんていない…中島みゆき自身が名曲「誕生」について語ったこと

 

「いらない子なんていないんだっていうことを言いたかった。」

 

中島みゆき自身が「誕生」について語ったこと

・“いない方がいいんじゃないか”
・中島みゆきの不思議な売れ方
・中島みゆき「誕生」について
・中島みゆき自身が名曲「誕生」について語ったこと
・いらない子なんていない
・名曲「誕生」に触れられる作品の情報

・“いない方がいいんじゃないか”

先日の記事で、中島みゆきが人前で歌い始めた理由について書いた。

衝撃!中島みゆきが歌いはじめた切実な理由

彼女は自分のことを“いない方がいいんじゃないか”と思い詰め、その答えをさがすために人前で歌ったことを語っていた。自分自身の存在に対する根源的な問い。彼女の歌の原点がそこにあるからこそ、彼女の歌は真に切実に胸に迫ってくるような思いがするのだろうか。

自分自身が“いなくてもいいんじゃないか”という切実な問いかけの影は、その後の彼女の歌詞の世界の中にも所々に顔を出している。7枚目のオリジナルアルバム「生きていてもいいですか」のタイトルは衝撃的だが、このタイトルからも“いなくてもいいんじゃないか”、“いない方がいいんじゃないか”という彼女の根源的な心の問いかけが聞こえてくるようだ。

彼女はこのアルバム「生きていてもいいですか」の中の曲「エレーン」の中で、迫真に迫る歌声でこのように歌い上げる。

“エレーン 生きていてもいいですかと誰も問いたい
エレーン その答えを誰もが知ってるから誰も問えない”

もしかして彼女の中で“いない方がいいんじゃないか”という問いかけは彼女の中で、ずっとずっと続いていたのではないだろうか。

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・中島みゆきの不思議な売れ方

彼女の曲の中には隠れた名曲が多い。大きな権力のもとで宣伝を積極的に行う方針ではなく、またたまに大きな権力の中で宣伝されたとしても、その場で突発的に売れたりすることの少ないのが、彼女の歌の面白いところである。

中島みゆき自身が「糸」について語ったこと

中島みゆきは「時代」と「糸」だけじゃない!

今や誰もが知っている名曲の「糸」だって、ファンの間ではもちろん名曲で知られていたが、当初はオリジナルアルバム「EAST ASIA」のアルバム曲に過ぎなかった。その後ドラマ「聖者の行進」の主題歌にもなり、すなわち大きな権力のもとで宣伝されたわけだが、そのときもとんと売れた気配はない。

しかしそのはるか後の時代で、まるで本当に価値のある宝石がその輝きを発見されその輝きを取り戻すかのように、言葉の素晴らしさにより人々の間に知れ渡ったというのは興味深い事実である。「糸」は今や誰もが知っている名曲となり、カラオケランキングでも常に上位だ。ダウンロードもミリオンを記録したらしい。

ぼくは短い自分の人生の中で、このような変な売れ方をした人を中島みゆきの他に見たことがない。発売当時は見向きもされなくても、徐々に徐々に、まるで美しい水が地下水脈を渡って人の世に現れ出るように、だんだんと人々の間に浸透していくのだ。「糸」や「地上の星」のような売れ方は、発売当初にお金をかけて宣伝しドカンと売らないと埋もれてしまう消費的な楽曲たちの多い世の中で、異例の存在であるだろう。そしてその存在はきわめて貴重で尊いものだ。

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・中島みゆき「誕生」について

しかし本質的には名曲なのに、「糸」や「地上の星」のように世の中に知れ渡っていない名曲が彼女の曲の中にはまだまだ存在する。「誕生」もそのうちのひとつだろう。

“ひとりでもわたしは生きられるけど
でも誰かとならば人生ははるかに違う
強気で強気で生きてる人ほど
些細なさみしさでつまずくものよ”

この最初の歌詞からグッと引き込まれるものがある。生きるというそこはかとないさみしさやは、2番のAメロでも見事に表現される。

“ふりかえるひまもなく時は流れて
帰りたい場所がまたひとつずつ消えていく
すがりたい誰かを失う度に
誰かを守りたい私になるの”

そのような寂寞の思いを、生きる上で誰もが抱えている。その上で人は時々、自分はいなくてもいいんじゃないか、生きていてもいいのかと、どうしようもなく自分自身に問いかけたくなる夜もある。心がひとりぽっちになってしまう日がある。

そんな心に向かって、彼女はサビの言葉により語りかける。

“Remember 生まれたとき
誰でも言われたはず
耳を澄まして思い出して
最初に聞いた WELCOME”

人は誰でも、この世に誕生する際には、ようこそと迎え入れられて生まれくる存在なのだ。その誕生の瞬間が、すべての命の根源にある限り、いなくていい命なんてあるはずがないと、そのような答えを導きだすに至っている。

しかし、あまりに絶望し、冷たく悲しみ、人のあたたかさを拒絶するような状況に陥った人ならば、そんな昔の誕生の瞬間の迎え入れの言葉を思い出せない人もいるだろう。そのような乾ききった心に対しても、彼女は最終的に語りかける。

“けれどもしも思い出せないなら
わたしいつでもあなたに言う
生まれてくれて WELCOME”

 

 

・中島みゆき自身が名曲「誕生」について語ったこと

彼女がインタビューで「誕生」について語った記事がある。

 

中島みゆき:これはいちばん先にレコーディングした曲。去年の9月24日にリズムを録ってる。うーん。もう一年経っちゃったんだよね。水島総監督の映画「奇跡の山ーさよなら、名犬平治」の主題歌。

最初は動物が出る映画ということぐらいしかわかんなくてね。「この犬です」って写真を見せられて、「うーん。これだけで一曲書くのはちょっと辛いですね(笑)。やっぱりちょっと映画も見たいですね」という感じでひきうけた(笑)。台本をもらって、フィルム編集に立ち会って…というふうに、映画と同時進行しながら作っていったの。

監督さん側からの注文としては、エンディングのタイトル・ロールが出てくるところにつ使うから、時間を合わせてほしいというのと、映画の中ではクラシックの曲しか使ってないから、歌詞にインパクトがあるのが欲しいということくらいで、歌の内容はおまかせだった。

すごく純情な監督さんで、ほんとに映画が好きなんだなぁって人だったから、映画の内容とともに、そういう純情な気持ちにすごい感動してしまってね。映画の編集って、時間に合わせてギリギリまでフィルムを切らなきゃならないのよね。監督さんが悔しそうなのがこっちにも伝わってきて、ああ、これは落としたくないよねぇ、でも劇場公開にはもう30分削らなきゃダメなのよね、みたいなのがね。

で、この曲は、映画に出てきたお母さんやあの子に言葉をかけるとしたら、こういうことかなという感じで作ったの。

英語圏では、赤ん坊を分娩室でとりあげた瞬間に「WELCOME」って声をかけるんだってね。どういう生まれだとか、能力があるとかに関係なく、どの子も「WELCOME」って言われるってことを思い出してほしかった。映画ではのっけから重く、自殺の話なんかが出てくるけれど、いらない子なんていないんだっていうことを言いたかった。

 

 

・いらない子なんていない

彼女の人前で歌い出した理由と、彼女の「誕生」を関連させて考える時、ぼくはふと思う。彼女は自分の存在に対する根源的な“自分はいない方がいいんじゃないだろか”という問いに対する答えを、もしかしたら「誕生」の中で、自分自身にも向かって歌っているのではないだろうかと。

「いらない子なんていないんだ」それが彼女なりの根源的な問いに対する答えであり、それをそのような率直な言葉ではなく、抽象的な歌という芸術作品へと昇華したことは、彼女が優れた歌びとであることを、今更ながら強く示しているように思われる。

高校時代の“いなくてもいいんじゃないか”という問いから、「生きていてもいいですか」という暗闇を通り抜けて、やがて「いらない子なんていないんだ」という誕生の觀念にたどり着いた彼女の歴史には、人間の存在に対する救いを感じることができる。

 

 

・名曲「誕生」に触れられる作品の情報

誕生の音源には2つがある。ひとつは、シングルの音源で、これはアルバムとしてはシングルコレクションアルバム「SinglesⅡ」とオリジナルアルバム「EAST ASIA」で聞くことができる。

「SinglesⅡ」には「誕生」の他に、「時代」や「浅い眠り」などのヒット曲も入っている。中島みゆきの知られざる名曲も多数収録されているシングルコレクションで、中島みゆきの新たな名曲を発見できる機会を与えられる傑作である。「Maybe」「あした」「グッバイガール」「涙-Made in tears」「シュガー」など素晴らしい曲は数知れない。

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「EAST ASIA」はオリジナルアルバムでは最高傑作ではないかと思える名盤で、あの「糸」やミリオンセラーの「浅い眠り」、夜会のテーマ曲「二隻の舟」も収録されている。

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中島みゆき自身が「EAST ASIA」について語ったこと

中島みゆき自身が夜会テーマ曲「二隻の舟」について語ったこと

そしてもうひとつの「誕生」の音源は「中島みゆきコンサートツアー2007 歌旅」で歌われたライヴヴァージョンが音源化したものである。これは「歌旅」のライヴCDの中で聞くことできる。

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さらに映像作品としては「中島みゆきコンサートツアー2007 歌旅」の映像作品の中に、「誕生」を歌う中島みゆきの神々しい姿が収録されているのでこちらも必見である。「歌旅」の映像作品は中島みゆきの歴史上初のコンサート映像作品であり、「地上の星」「宙船」「 ファイト!」などのヒット曲も多数収録されている。

 

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