「自分はいない方がいいんじゃないか?」中島みゆきが高校時代に歌い始めた衝撃的で切実な理由とは?

 

彼女は自分を、“いない方がいいんじゃないだろうか?”と思っていたという。

「自分はいない方がいいんじゃないか?」中島みゆきが高校時代に歌い始めた衝撃的で切実な理由とは?

・日本を代表するシンガーソングライター中島みゆき

中島みゆきといえば、今や日本人で知らない人はいないだろうと思われるほど、日本を代表するシンガーソングライターである。

彼女はデビュー当時からしばらくの間は、暗い歌を歌う女、フラれ歌を歌う女、別れ歌を歌う女、恨み歌を歌う女というイメージだったという。しかし、今となっては自分を奮い立たせてくれる歌を歌う人、応援歌を歌う人というイメージも定着しつつあるようだ。また「糸」が幅広い世代に受け入れられ、連年カラオケ年間チャートでもトップに留まり続けているように、感動的な歌詞を作る人としてのイメージもあることだろう。

そんな、誰もが知る歌びとである中島みゆきであるが、彼女が歌を歌いはじめる理由は何だったのだろうか。

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・中島みゆきが歌いはじめた理由

彼女が人前ではじめて歌ったのは、高校の文化祭であったと彼女自身が回想している。その時のことを、彼女はこんな風に語っている。

ひとつのカケみたいなところがあってね。その頃、なんて言ったらいいのかな、精神的すごく煮詰まっていたわけ。そんでもって、すごい閉鎖的な気分に陥っていたわけね。

う〜ん、でね。もう、変に考え込み過ぎちゃったのかもしれないんだけどね。自分がさ、必要のない人間時なんじゃないだろうか、とふっと思いだしたわけ。

“いなくてもいいんじゃないだろうか?”というのを通り越して、“いない方がいいんじゃないだろうか”とか、そっちの方へずっと行っちゃったわけ。で、それもんで試行錯誤がいくつもあって、どれもつまずいてしまってね、もうダメだ、ってところだったわけね。

そんなわけで、ひとつのカケとして、人前に思い切って出ちゃうみたいなね。

もし、人前に出て、私がいない(存在しない)方がいいんだったら、石が飛んでくるなり、みんな帰ってしまうはずだって、みたいな感じの最終的なカケの気持ちだったの 

彼女はこのように決心し、高校の文化祭において人前ではじめて歌うことを決意する。

彼女の高校はちょっと前までは男子校だった。そんな高校の生徒会室へ、歌を歌いたいことを申し出るために入った際の“女が何しにここへ来た”という男たちの眼を、彼女は忘れられないという。

 

 

・中島みゆきという歴史の始まり

そのとき、どっちかというとワルかったから私。

だけどね、コンサート終わってから優等生グループみたいな方の親玉っぽいのが私のところへ来てね、“聞いたよ。よかったよ”みたいなことを言ってくれてね。やってよかったな、と思った。

あんまり、学校へは行ってないし、学校の話ではついていけないし、それ以外の話でも話に入れないみたいな気持ちになってたし、彼らと話なんてことは、まずもってなかったわけですよ。学校へ行ってもしゃべる人はいなかったし。

それが、向こうから優等性の親玉みたいなのが、声をかけてくれたんだものね。他の話題だったら、どうやっても入れなかった人たちと、話せる状況が他にもあったんだなって思った。

無事に文化祭で歌い終えたときのことを、彼女はこのように語っている。

自分のことを、“いない方がいいんじゃないだろうか”とまで思いつめ、自分の存在の真意を確かめようとしたようにすら思える彼女の最初の歌う試みにより、彼女はその状況から自分自身を救ったようだ。

彼女の歌がいつも切実に胸に迫ってくるものばかりなのは、彼女の歌の歴史が、このように絶望的な状況から始まったものだからなのかもしれない。

 

 

・生きていてもいいですか

彼女の“いなくてもいいんじゃないだろうか?”“いない方がいいんじゃないだろうか”という、自分の存在に対する切実な問いは、彼女の7枚目のオリジナルアルバムのタイトル「生きていてもいいですか」という言葉を彷彿とさせる。

まさに彼女の歌い始めた理由であるところの、自らの存在に対する根源的な問いが、時を経てうまい具合に昇華され、このような名作アルバムが生まれたのかもしれない。

しかし、このアルバム、暗い。タイトルそのものもドキッとするくらい深く暗いし、ジャケット写真なんか、日本でいちばん暗いアルバムジャケットなのではないかと思えるくらい真っ暗である。真っ暗闇の真ん中に、タイトル「生きていてもいいですか」と、最後には消えそうになりながら書かれている象徴的な写真だ。

そして、この真っ暗けなアルバムの最初に一曲のタイトルは、まさに「うらみ・ます」である。暗い。そしてその曲の中では、中島みゆきが最後の方泣きながら歌っている。

そして最後の2曲は、暗いというより、重たく深い。彼女は曲「エレーン」の中でこのように歌う。

エレーン 生きていてもいいですかと誰も問いたい
エレーン その答えを誰もが知ってるから誰も問えない

まるでこの世界の中で歌い始めた頃の彼女に、生きていてもいいですかと、暗闇の中から切実に問いかけられているようだ。そしてその問いかけは、自分自身の問いかけでもあるように感じられる。

 

 

 

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