縦の糸はあなた 横の糸はわたし
「糸」に隠された意外な意味とは?!中島みゆき自身が語った名曲「糸」の歌詞の意味を徹底解説
目次
・誰もが知っている名曲となった糸
中島みゆきの「糸」は、今となってはカラオケのランキングで常にトップ周辺にに存在する、誰もが知っている、そして誰もが歌える名曲となった。しかし「糸」が最初に世に出たときには、それほど注目されていたわけではない。「糸」はもともと、中島みゆきの1992年発売の20枚目のオリジナルアルバム「EAST ASIA」の最後のアルバム曲の一曲に過ぎなかったのだ。
・最初は一曲のアルバム曲に過ぎなかった
中島みゆきが好きな人ならば、彼女の曲の中に「糸」という名曲であることを誰もが知っていたものの、世間がその存在を知っていたわけではなかった。その後「聖者の行進」というドラマでも主題歌となり「命の別名」という曲と共にシングルになったものの、このシングルもさほど売れたわけではなく、知名度は少し上がった程度だったのかもしれない。
風向きが変わったのはおそらく、Mr.Childrenの桜井さんがBank Bandとして「糸」をカバーしたことがきっかけだろう。若者を中心に絶大な人気を誇る桜井さんが「糸」を取り上げたことで、すべての年代に満遍なく「糸」という曲の素晴らしさが知れ渡った。その後も徐々に時間を経て、まるで清らかな水が地下の水脈をくぐり抜けてやっと地上に生まれ出るようにして、「糸」は誰もが知る名曲となっていく。現在では過剰と思われるほどの多くのカバーが発売されている。
みゆきファンだけが知る名曲だった糸は、日本人誰もが知る名曲となったのだった。
・本当に素晴らしいものは自分自身で見つけなければならない
ぼくは時系列でこの「糸」の世間の認識の移り変わりを見る度に、本当に素晴らしいものは自分自身で発見しなければならないのだとつくづく思い知らされる。聞いたならば誰もが名曲と感じる「糸」でさえ、きっかけがなければ多くの人に知れ渡ることはなかったのだ。現代的に言えば「インフルエンサーに取り上げてもらえなければバズらない」と言い換えることもできるだろう。
世間で「流行っている」と言われているものは大抵新しく、そしてその新鮮なうちに多くの金の力と権力を使うことによって、人間たちに無理矢理押し付けるようにして浸透させられているのだ。そして押し付けられた人間たちは、こんなに宣伝されているそれこそが良質な作品であろうと洗脳されて、大して価値のないものたちが世の中で流行っていく。本当に良質なものは大抵、新しいうちに金や権力が使われない限り、古くなりその他の売れない作品とともに過去に埋もれていくだろう。実にむなしい社会の仕組みである。しかし「糸」はそんな事実に反して、まるで過去から蘇るように転生を遂げ、現代の光を浴びている。「糸」はほんの少しばかりの希望の光かもしれない。
ぼくたちは、本当にこの命にとって重要な、精神と呼応するべき深遠な作品を取りこぼさないために、常に感受性を働かせなければならない。売れているものにも、売れていないものにもアンテナを働かせ、自分自身の感性というものを見失ってはならないと思う。
・瀬尾一三が「糸」ついて語ったこと
先日、編曲者の瀬尾一三さんのネットラジオを聞いていたところ、「糸」の編曲の前奏は平安時代などの宮廷音楽をイメージしたという裏話を語っていた。「今の世界ではなくて絵巻物の世界をイメージした。頭を和楽器みたいに、ショーのようにした」とも語っている。
中島みゆき自身はもはやラジオに出ても大切なことを何も語らず作品を聞いて感じてくれと言わんばかりのスタイルとなっており、この瀬尾一三さんのラジオの方が、中島みゆきの作品について詳しく知ることができる。「ラジオ瀬尾さん」というネットラジオはみゆきファン必聴であると言える。
・中島みゆき自身が「糸」について語ったこと
中島みゆきが「EAST ASIA」を発売した際の彼女自身の全曲解説のうち「糸」に関して言及しているデータを見つけることができたので、要約してここに掲載する。
中島みゆき:かたっぽだけじゃ、できることに限界があるっちゃねぇ、っていう歌だわね。男には男の特性が、女には女の特性があって、どっちが上とか、どっちが劣るとかいうことじゃなくてね、それぞれの特性のいちばんおいしいところを合わせて、はじめて物事ってうまくいくんじゃないかってつくづく思うんで。それは「EAST ASIA」から「糸」まで、アルバムの曲全部通して言ってることかな。
最近は、女が強いとか、やっと女が権力を得てきたとか、いろいろ言われているけれど、今まで女が下だったとか、そういうことじゃないんじゃないかと思うの。どこまでいっても違うもんは違う。違うからお互い触発されることもあるし、お互い必要なこともある。最終的に男と女がまったく同じものになったら理想的というんじゃないんじゃないかいお客さん、てのがあるよね。