お金や損得勘定は、愛からはるか遠い存在だと教えてくれる中島みゆきの歌4選

 

お金や損得勘定は、愛からはるか遠い存在だと教えてくれる中島みゆきの歌4選

・人間はお金を支配するのではなくお金に支配されている

ぼくたち人間は間違いなく、お金なしでは生きられない。それは明白な事実であるものの、お金を稼ぐことに夢中になったり必死になりすぎるあまり、まるで自分が生きているのはお金のためであるかのような錯覚を引き起こしてしまう。

人類の祖先は太古にお金を発明し、ぼくたち人間はお金を利用して人生を豊かに過ごすはずだったのに、いつの間にかお金に突き動かされ、お金を利用するのではなくお金に支配されるようになってしまっているのではないだろうか。お金を作った人類がお金を支配するのではなくお金に支配されているのでは本末転倒だ。しかしそのような現象は、世界中のあらゆる国で起きている。

重要なことはお金に支配されるのではなく、お金を利用しお金を支配する側の立ち位置を取り戻すことだ。そして本来成し遂げるはずだったお金ではない人生の目的をもう一度思い出し、お金を上手に利用することでそれを実現する手助けをしなければならない。

 

 

・トルストイと中島みゆきの作品に共通する”無償の愛”の重要性

ロシア人作家トルストイはその著書「人生論」の中で、人生の目的を”幸福になること”だと定義づけた。そしてあらゆる人間の幸福は、”愛”によってしか達成されないと結論づける。トルストイの言う愛とは、世間でよく言われているところの男女間の性欲にまつわる動物的な発情ではなく、見返りを求めずただひたすらに与える姿勢を貫くというキリスト教的な”無償の愛”を意味していた。損得勘定を無視して、喪失することを恐れず、ただ相手のことを思いやり与え続けることで、人間は欠乏することのない真実の幸福を手にすることができるのだと「人生論」の中でトルストイは一貫して主張する。

そしてトルストイと同じく無償の愛の重要性を唱え続けている日本の女性アーティストがいる。それがかの有名な中島みゆきである。中島みゆきが無償の愛について歌う作品は、その活動期間の初期ではなくむしろ後期である最近になって数多く見られるが、その歌詞の特徴として愛の重要性を際立たせるために、愛とは対照的なものとしての”お金”やそれに伴う”計算”、”損得勘定”を引き合いに出す傾向があるようだ。以下に中島みゆきの無償の愛に関する作品、そして愛と相反するものとして”お金”や”損得勘定”にまつわるキーワードが効果的に歌詞の中に散りばめられている様子を見ていこう。

 

・中島みゆき「I Love You,答えてくれ」

プラスマイナス数えながら
君を見つめるわけじゃない
いつか実りをもらうため
君を大事にするわけじゃない

惚れた方が損になるなんて
取引や投資じゃあるまいし
惚れて嬉しい単に嬉しい
同じ時代に生まれて嬉しい

愛されずにいられない馬鹿もいる
悩まないで受け取ればいいんだよ
愛さずにいられない馬鹿もいる
受け取ったと答えてほしいだけさ

I Love You,答えてくれ
I Love You,答えてくれ
I Love You,答えてくれ I Love You

 

(この記事は著作権法第32条1項に則った適法な歌詞の引用をしていることを確認済みです。)

 

・中島みゆき「あした」

もしも明日私たちが何もかもを失くして
ただの心しか持たない痩せた猫になっても
もしも明日あなたのため何の得もなくても
言えるならその時 愛を聞かせて

 

・中島みゆき「走(そう)」

恩人は恩返しを待っている
損になるか得になるか数えている
一切れの優しさも 一切れの励ましも
見返りを数えている

ぼくは迷っているのだろうか
ぼくは走っているのだろうか
約束の船は風の中 遥かな吹雪の中
どこまでもどこまでも荒野は続いている

辿り着けたら誰がいるだろう
力尽きたら誰が知るだろう
報われたならその時泣こう
それまでは笑っていこう

Yes My Road
Yes My Road
愛だけで走ってゆく

created by Rinker
Yamaha Music

 

・中島みゆき「I love him」

愛そうなんて思わなけければ
失うものは何ひとつない
与えられる愛を待つだけならば
もらい損ねても悪くてもゼロ マイナスはない

それならば私は何も失わずに生きていけた
でも何か忘れたことがある
でも誰も愛したことがない

それで生きたことになるの?
それで生きたことになるの?
長い夢の後 本当の願いが夢の中 目を醒ます

I love him
I love him
I love him
I love him
I love him
I love him 返される愛はなくても

created by Rinker
Yamaha Music

 

・お金や損得勘定は愛から最も遠く離れた存在だ

ぼくたちは資本主義の世の中に巻き込まれ、必死にお金を稼ぐために生命をすり減らしながら生きる運命を背負わされると、いつの間にか損得勘定に思考を支配され、なるべく損をしないように得だけをするように計算しながら小賢しく生きるようになる。そのような世界においては与えることが喪失や損失へと繋がり、奪い取ることが獲得や利益をもたらすので、ただひたすらに与え続けるという無償の愛が確立されず、トルストイや中島みゆきの言う人間の真実の幸福へと辿り着く道は閉ざされるだろう。

中島みゆきが現代において無償の愛の重要性を強調するために見返りや損得勘定を引き合いに出すのは、見返りを求めることや損得勘定の計算をすることが当たり前になっているこの世の中において、みんなと同じようにお金に支配される生き方をしているだけでは、決して愛には辿り着けないということを見抜いているからではないだろうか。そして世の中で重要とされているお金や損得勘定はぼくたちにとって本当に大切な愛からは最も遠く、世の中で言われている噂を素直に信じ込み流されるように生きているだけでは、ぼくたちは真実の幸福へと到達することができない。

重要なのは世の中の常識や正しさを疑い、睨みつけ、打ち砕いていくほどの揺るぎない反骨心だ。みんなと同じように生きていれば、確かに心地よく安らかな気持ちを得られるだろう。しかし協調性の中に宿るそのような偽物の安らぎに心を奪われていては、決して真実の幸福へ辿り着くための通路を見出すことはできないだろう。真理へと通じる道は、常に孤独だ。どんなに孤独に打ちひしがれようとも、どんなに無様に傷つけられようとも、真実の幸福へと辿り着きたいという貫かれた覚悟がある限り、ぼくたちは必ず愛の姿を見届けるだろう。

 

 

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