旅人たちの間で
挨拶のように交わされる言葉
異国を旅する者ならば
必ず聞かれるこの言葉
ウェア・アー・ユー・フロム?
ウェア・アー・ユー・フロム?
わたしがどこから来たかというのは
わたしがいちばん知りたいけれど
あなたが聞きたい言葉となれば
わたしには心得ている回答がある
わたしの肉体が生まれた祖国の名を
あなたに正しく伝えたならば
あなたは満足して聞き終える
まるですべてを聞き終えたかのように
ウェア・アー・ユー・フロム?
ウェア・アー・ユー・フロム?
それで終わりですか
それがわたしですか
わたしは祖国ですか
それがすべてですか
祖国の名を聞けば何がわかるのかを
誰もがわからないままに
けれど誰もが問い続ける
わたしの生まれた国の名を
わたしが誰ですかということを
誰もが尋ねずに
わたしが何人(なにびと)であるのかを
誰もが問いかけずに
わたしは国から遠い旅人
誰もが国から遠い旅人
国民が集合すれば国家となるはずなのに
民衆と国家は最も遠い
わたしのことを聞いてください
国ではないわたしの色彩を
集合から帰納されるわけではない
目の前のわたしの吹かせる風を
願ってみても届かない
今日もまだ旅のさなか
誰もが今日も問い続ける
誰もが今日も答え続ける
ウェア・アー・ユー・フロム?
ウェア・アー・ユー・フロム?
わたしは国に成り果てた