ひとつの肌
あなたの肌についた傷の痛みは ただひとりあなただけのもの ぼくをあなたからのけ者にする ただあなただけのもの あなたの傷の痛みを感じる 肌をぼくは欲しくなる どんなに思い合っていても 違う痛みをまといたくな…
あなたの肌についた傷の痛みは ただひとりあなただけのもの ぼくをあなたからのけ者にする ただあなただけのもの あなたの傷の痛みを感じる 肌をぼくは欲しくなる どんなに思い合っていても 違う痛みをまといたくな…
同じでなければならないことが どうしてこんなに多いのでしょうか 似ていなければ笑われるおそれが どこまで人を巻き込むでしょうか わたしたちは人間 どうしようもない人間 同じことばかりね 似ているところばかり…
あなたの肌を傷つけても ぼくは何も感じない ぼくにとってはそれが 不思議で仕方がない どうしてぼくも一緒に 痛みを感じないのだろう どうしてあなただけが 痛いと泣くのだろう あなたの肌はただ …
旅立ちの日の心を 人はすぐ忘れてしまう 旅立ちの日の光を つかもうとして逃してしまう どこにでもあふれていたものを 手放しながら命は進む いつにでも触れられたものを 通り抜けて先を急ぐ 時は濁…
ぼくの魂を誰にも明け渡さないため 誰にも本当の名前を教えない 悪魔が追ってくるかもしれないよ 名前がバレたら襲われてしまう 我を守るため 子を守るため 偽物の名前をつけなさい 誰が悪魔かはわか…
生まれくる国が違えば 出会えない人もある 生きていく時代が違えば 巡り会えない人もある いかようにもすれ違わない縁 ぼくたちは触れ合えない わかりあえても交わせない縁 ぼくたちは語り合えない …
はじまりの風はウラジオストクに吹く風 透明で少し冷たい心が 海からの淡い光に照らされて消える どこからともなく心はよみがえる 前を向くしか行く道はない 見知らぬ鉄道へとたどり着く足 片道の切符…
愛されることを待ちわびて 愛することに後ずさって 人生は過ぎていった どちらかを選ぶことなしに 与えられることに憧れて 与えることを疑って 時は流れ去っていった どちらをも選びきれずに ぼくが…
人は誰も掌にナイフを持っている 彼らはそれとは気づかなくても 生きているだけで世界を切り裂く 分裂された世界で誰かを傷つける ぼくたちの生命の正体は善良か ただ切り裂くための悪魔か 誰もが自分を愛しているか…
この世でどんなに偉大な 旅の出離を果たしても 誕生の瞬間ほどの 天地の返る旅立ちはないだろう ぼくたちの旅立ちは 常に微小だ おそれることはない ひるむことはない どんな異国へ赴いても 異なる言葉が響いても…