氷を踏んで
氷を踏んで生きて来たのに 突如氷を踏めなくなる時を知る 滑ったことも落ちぶれたことも悲しかったことも それすら愛おしく思う日が来る 氷を踏んで生きることを 虚しく思う日もあったのに どんなにか…
氷を踏んで生きて来たのに 突如氷を踏めなくなる時を知る 滑ったことも落ちぶれたことも悲しかったことも それすら愛おしく思う日が来る 氷を踏んで生きることを 虚しく思う日もあったのに どんなにか…
流氷はロシアの落とした氷の涙 それをはるかなる北の大地が受け止める 夢のように敷き詰められた氷原は 美しいロシアへとつながっていく 悲しみを誰かに受け止められたなら 悲しみも少しは軽くなる そ…
美しくないことをおそれない 不整であることに怯えない まともになることのできない 人生に救いをあげたい ねぇあなたもそうでしょう 闇の中ひとり俯いているのでしょう 決して正常になれない命を 抱…
生きている限り 命は常に傾いている 右へ行くか左へ行くか 天を飛ぶか地を這うか 鼓動を打つ限り 命はどちらかを選んでいる 男を取るか女を取るか 昼に住むか夜に住むか ぼくがぼくを愛することが …
与えられるはずのない 定めを引き受け旅は始まる 失くすはずのないものを 喪失しながら旅を継ぐ どうしようもなく悲しい心を 歩ませるのは学問ではなく どうしようもなく痛む傷を 忘れさせるのは習わ…
どうでもいい出来事に 絡まって動けない浮世は蜘蛛の糸 抜け出せばたちまちに おそろしい怪獣が食いちぎる そんな呪いの言葉を真に受けて 動けずにいた小動物の群れ 迷える魂を支配しているのはいつも 怯えて生きて…
旅する者の瞳はこの世にはない どんなに呼びかけても応えは返らない 閉ざされた深い異国の陰で あなたの心は安らかに眠っている 傷つき果てた先に旅立ったのならば 旅立つという理由は炎に近い 問いか…
ぼくは異国を旅することができない どんなにはるか遠くまで 肉体を旅立たせても 心まで旅立たせることはできない もしかしたら誰もが そうなのかもしれないわ あらゆる心はひとところに留まり 旅立ち…
マッターホルンへ行く者は この世の歩みを忘れている マッターホルンへ行く者は 自分の生きることを忘れている 本当は手放したかったものを 手放して旅立ちなさい あらゆるものが白い世界へ 天を貫く…
遠い過去に海に包まれた幻影が わたしにも聞こえる あなたにも聞こえますか わたしの海とあなたの海はつながる 関わらないように見えるものたちが 根の底で結ばれている 巡り会うはずもない心の粒が …