もしもぼくが女だったなら
あなたに好かれても嬉しくなかった
ぼくの肉体が好きなのか 心が好きなのか
わからなくなるから
あなたは女の肉体を求めるのに
ぼくに好きだと言ってくれた
それはあなたがぼくの魂に触れたことを
意味していたから愛おしく思った
世の人々はどう見極めるのだろう
生殖器が欲しいのか 気持ちが欲しいのか
世の人々はどう見分けるのだろう
お金が欲しいのか 愛が欲しいのか
もしもぼくが女だったなら
あなたに好かれても当たり前だった
あなたの求める肉体を持つのなら
好かれない方がおかしかった
思いも寄らないことだけが
ぼくたちの魂を揺らしていく
言われるはずのない好きという言葉が
ぼくの命をさらっていく
見知らぬ異国へと
足を踏み入れる旅人のように
行かなくてもいい異郷に
突き進まされる運命のように
越境者にしか見えない遥かなる風景
破れた細胞膜にしか宿らない痛み
もしもあなたが男を好きならば
ぼくはあなたを探さなかった