ひとつの果実
わかりあえる人ならば 一生にひとりいれば十分だ 触りあえる果実なら この世にひとつあれば幸福だ 君の果実の色しか知らない そのままで人生を終えたい ぼくの果実の熱しか知らない そのままの君と眠りたい すれ違…
わかりあえる人ならば 一生にひとりいれば十分だ 触りあえる果実なら この世にひとつあれば幸福だ 君の果実の色しか知らない そのままで人生を終えたい ぼくの果実の熱しか知らない そのままの君と眠りたい すれ違…
果実を触っているのに 何も感じないなんて不思議だ 今までは果実を触ればば必ず ぼくは感じていたはずなのに ぼくはぼくの果実しか 触ったことがなかったから 果実を触れば必ず ぼくは快楽を感じてい…
どれくらい自分の果実で 遊ぶのと君は尋ねた ぼくは恥ずかしくなって すぐに君から顔を隠した 俺は毎日だと 告白した君の笑顔 まだ誰も触れていない果実を 君は毎日触るんだね ぼくも毎日だよと 君…
ふたりにしか入ることのできない 秘密の鍵をねえ 他の誰にも渡さないでね 春の光そそがれる秘密の楽園に ねえ他の誰も 道を教えないでね 君をひとりじめしたいんじゃなくて この楽園を おかしな色で染めたくないん…
ぼくたちだけの秘密 誰にも知られてはいけない それなのに幸福は 光の部屋の中で起こされた 触りあう果実が どちらもとけそうになって 少しでも強く握れば 砕けて落ちてしまいそう 君が誰にも見せない 果実の形を…
強く握られると 少しだけ痛かった 優しく撫でられると 声を止められなかった そんなところを撫でられると 気持ちいいことをはじめて知った 君もひとりの時にそうして 自分の果実を触るんだね 自分で触ることと 君…
真理の果実は人からもらっても その手の中で腐って落ちるだけ 自らの真理の果実を持たなければならない 他人の果実を決して持ってはならない 自らの樹木で 自らの土から 自らの水で 自らの光で 力の限り生き抜いた…
布ひとつの下に 君の果実が隠されている 熱く固く震えることで 見えるよりもその存在を示している 見えるなんてくだらないよ 見えないままで感じたいんだ その熱さで その固さで その動きで そのにおいで 見える…
なぜ隠し合うのかを ぼくたちは知っている 誰もが存在することを知りながら 誰もが存在しないフリをする 動物的であってはならない “人間的でなければならない” 野性的であってはならない “理性的でなければなら…
君に触れられると 自然と脈打つぼくの果実 先端へと広がる快楽の波が 青い液体へと導かれるよ ぼくの果実の名前を 君はいつも聞いた ぼくが答えられないと 君は嬉しそうに触った こんなにも自然に 熱くなることを…