あなただけがぼくの果実を知っている
ぼくは自分をおかしいと思っていた だから誰にも果実の話をしなかった 恥ずかしくて おそろしくて ぼくの果実は他の少年のものとは異なることを知っていた あなたはいつも果実の話をしていた それは他…
ぼくは自分をおかしいと思っていた だから誰にも果実の話をしなかった 恥ずかしくて おそろしくて ぼくの果実は他の少年のものとは異なることを知っていた あなたはいつも果実の話をしていた それは他…
あなたの肉体の熱さを覚えている あなたの果実の脈拍がこの肉体に刻み込まれ ぼくたちは魂を持つ者 それなのに ただ肉体だけに支配されながら青い春に苛まれた 男は肉体を見ることで果実を高ぶらせると…
どうせ確かめられないのなら 信じるより他はない 二度と巡り会えないのなら 疑うことに意味はない 証明できないからこそ 生きていける命がある 解き明かせないからこそ 心をなくさずに生きられる 人…
それは間違いだと他人が言っても ぼくは信じてあなたを待ち続けるだろう 迷うことを教えられなかった炎が 根源に宿ることを感じずにはいられない 根拠もなく理由もないぼくの確信を 理屈に合わないと誰…
ミコノスで巡り会った猫は ぼくが生まれる前の姿だった ぼくもあの猫のような曇りなき瞳で あの人を永遠に見つめ続けた 裏切られてしまうなんて 本当は露ほども考えていなかった あの人の愛が消え失せるはずはないと…
あなたに愛されていた時には あなたを失うことが怖かった あなたを疑うことしか知らなかった あなたを信じることができなかった あなたから遥か遠く離れて 異国を彷徨うことになって初めて ぼくは自分…
捨てられた犬のように あなたが戻るのをずっと待っている 魂は疑うことを知らない 魂は迷うことを知らない あらゆる異国を彷徨う時にも ひとつの祖国を深める時にも あなたを忘れたことがない あなた…
私は異国を旅していると思っていた けれど真実、私は巡礼をしていた 世界中の神々に出会うために 私はこの肉体を祖国から断ち切った もはや私が大人ではなくなり もはや私が人間ではなくなる時 神々は…
もしもこの一生の中でもう あなたに巡り会うことがなければ あなたは運命の人ではないのだろうか ただの通りすがりの人だったのだろうか たかが人間の一生なんてはるか短い 深海がひとつ呼吸をするだけ…
なぜ人間の言うことに 従ってきたのだろう 親の命令を聞き 目上の命令を聞き 浮世の命令を聞き 従わなければ生きられないと脅され続けた 抑圧された時代は遠ざかり 支配された心は解き放たれ やがて…