ムルマンスクの光
どこからが朝で どこからが夜か わからなくなります どこからが本当で どこからが嘘か わからなくなります ここは北の極み ムルマンスクの土地 冬の光も届かない異国 朝焼けがそのまま 夕焼けにな…
どこからが朝で どこからが夜か わからなくなります どこからが本当で どこからが嘘か わからなくなります ここは北の極み ムルマンスクの土地 冬の光も届かない異国 朝焼けがそのまま 夕焼けにな…
すべての心に冬が来る すべての心に雪が降る それを誰もが止められぬ 少しの祈りも消え果てて わずかの夢も散り果てて そして誰もが雪を見る まるで死へと向かうように 季節の終わる時を知る もう二度とは帰らない…
美しいものしかいらない 旅をゆく果てない線路の上で ありふれた偽物はいらない 直感だけが美を選び取る 軌道を横切る惑わしの風 列車を遮るまばたきの雨 わたしのからだは真空のように 妨げを通り抜…
ちょうちょをこの指でつかんだとき その羽根があまりに薄すぎるあまりに 自らの指の体温が 羽根を伝ってお互いに伝わり合う まさにそのようにして 夢と現つは重なり合った それはロシヤの朝の森 ふたつの岸辺は達し…
ウラジオストクの宿から持ってきた お茶の葉がついに途絶え あなたのくださった紅茶を淹れる日が とうとうやって来ました ここは北極圏・スオミの地 あなたの国とは異なります あなたはどうしているでしょうか 健や…
氷を踏んで どこまでも行こう ノーザン・ライツが見えるまで ノーザン・ライツが見えるまで 星空の夜をください 月のない暗闇をください ノーザン・ライツが見えるまで ノーザン・ライツが見えるまで 地響きの音が…
ぼくの中の少年が呼ぶよ お母さんのところへ帰りたいと どうしてこんなに遠くの国まで 訪れてしまったのだろう 旅人の炎が燃え盛る どこまでも見知らぬものを追ってゆく ぼくの中の少年が泣き叫ぶ 本…
旅がぼくを洗い流す 清らかな風で洗い流す これまで生きて来たこと これから生きていくこと すべてをなかったことにする 過去を省みること 未来を思い案じること 虚しい時間を荒野の中へ返す イマ旅をしていること…
ぼくに幸福が訪れるのは 与えられたときではなかった ぼくが生まれた意味を知るのは 愛されたときではなかった それはまさに与えるとき 与えられたように幸福を呼び醒す 天へ向かって与えるときに 授けられたように…
与えられることだけが ぼくの生きてゆく習いだった 生かされたことだけが ぼくのたったひとつの償い どうかゆるしてください 与えうる何もないこと どうかわかってください 生かしうるすべもないこと 申し訳なさそ…