バブーシュカ

 

ウラジオストクの宿から持ってきた
お茶の葉がついに途絶え
あなたのくださった紅茶を淹れる日が
とうとうやって来ました

ここは北極圏・スオミの地
あなたの国とは異なります
あなたはどうしているでしょうか
健やかなることを願ってやみません

あなたの写真も撮らなかったけれど
あなたの顔も朧げとなるけれど
シベリア鉄道の中でくださった優しさを
決して忘れることはありません

あなたのくださった鶏肉のおかず
あなたのくださった可愛らしいお菓子
あなたのくださった紅茶の葉
わたしの肉体はあなたに生かされています

不思議ですねわたしは
フィンランドまでやって来たのに
思い出すのはロシヤのことばかり
素朴で慈しみ深いシベリヤの大地ばかり

わたしの肉体はロシヤでできている
今でさえロシヤからのあたたかなお茶を飲む
けれどいつしかわたしの肉体からも
ロシヤは消え去ることでしょう

バブーシュカよ ロシヤのあばあさま
それでもロシヤは生きています
わたしの中で永遠に
あなたの“与える”という心に於いて

 

 

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