水色の球体

 

 

ぼくの中の少年が呼ぶよ
お母さんのところへ帰りたいと
どうしてこんなに遠くの国まで
訪れてしまったのだろう

旅人の炎が燃え盛る
どこまでも見知らぬものを追ってゆく
ぼくの中の少年が泣き叫ぶ
本当は安らかな日々しか要らないと

黄色い夏の光の真ん中
おばあさまの家で眠って
与えられた硝子の器の
桃と梨を慈しんでいたい

ぼくを祖国へ帰してよ
ぼくの中の少年は泣く
もはや祖国などありはしないと
旅人の炎は泣く

永遠に逆らい続ける炎の揺らめき
青い炎と赤い炎
留まる心と旅立つ心
祖国を愛する気持ちと異国へ燃立つ魂

引き裂かれながら旅人は生きるという
男と女に引き裂かれ
生と死に引き裂かれ
過去と未来引き裂かれ

それでもなおまだ
引き裂かれるものは加えられる
まだ足りないまだ足りないと
相剋の定めはとめどない

対極は無限に増幅し
やがては球を描くだろう
この惑星のように
この世界のように

美しい水色の球体を抱きしめて
ぼくは引き裂かれ泣くだろう
砕け散った心のその先に
旅人の美しい祖国がある

 

 

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