天空の解脱

 

 

あの人が他の女に好きと言うことを
あんなに泣いて責めるべきじゃなかった
あの人の本能が女の肉体をひたすらに求めることを
踏みにじってけなすべきではなかった

あの人が誰にも渡さないかけがえのないものを
与えられていたのに気づかず打ちひしがれた
あの人が一生でたった一度しか持つことのない宝石を
ぼくは惜しみなく贈られ続けていた

男が女を愛することに大きな意味はない
その先には肉体と発情が横たわっている
幸福を約束されたかのように教え込まれた道を
進んでゆく足に何の価値があるだろう

ぼくには彼に与えられるものが何もなかった
それなのに彼は愛の言葉を与えてくれた
ぼくが何も持たないことを知っていたのに
彼はそれでもいいよと抱きしめてくれた

解き放たれなさい 心よ
黒く淀んだ深い恨みの海の底から
もう飛び立てるはず
呪いに青ざめた南の島々を超えて 虚空へ

 

 

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ノンケの彼がゲイのぼくと恋愛しても何ひとつメリットなんてないから、彼の「好き」という言葉を尊いと感じた