麗江 〜憧れについて〜

 

 

憧れるための理由を
自らの中にさがすけれど
いつまで経っても見つからない
自分のことなのに答えを持たない

あの人を好きになることに
誰にも訳を告げられないように
夏の匂いをどこまでも求める本能に
ひとつの言葉も追いつかないように

まさにそのようにして憧れてしまう
国があなたにもありますか
言葉や理由を追い越すものに
あなたは安らかに司られますか

もしかしたら生まれる前の魂が
そこに住んでいたのかもしれないな
もしかしたら遠い昔のご先祖様が
そこから遥かなる旅を始めたのかもしれない

魂の円環を辿る術を持たないぼくたちは
ただただ予感に命を任せるしかない
血の流れを遡る魚になれないぼくたちは
やがて訪れる祈りを聞き取るしかできない

少数民族たちの行き交う辻
雪山から流れ来る清らかな水
麗しい古民家たちが立ち並ぶ町並み
国ではなく時を旅しているような錯覚

憧れを憧れのままで一生
夢見るだけで終わるのならば
心はきっと安らかで楽しいけれど
裏切られることもないけれど

この世の美しさを見終えた後に
またもうひとつ美しい夢を見ないか
美しさの本性に触れることをおそれて
暗闇の中を彷徨ってはいられない

美しいものは美しいのだと
教えてくれるあなたがいた
おそれることなく手をのばすべきだと
戸惑いもない声がぼくを呼んだ

麗しの都・雲南省の麗江よ
あなたはぼくが思い描くよりも
はるかなる美しさを伴って
ぼくをその地へと迎え入れた

憧れることをもうおそれない
美しさに触れることを退けてはならない
ぼくは見知らぬ人の声を聞いていたんだ
自我と宙の中点に広がりゆく意識

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ