根源の愛 〜ぼくはぼくを抱きしめて歩いた〜

 

 

あなたを抱きしめて歩き出せば
腕の中のあなたはぼく自身だった
ぼくはあなたを抱きしめたつもりで
遠い昔のぼくを慈しんでいたんだ

あなたにとって世界のすべては新しく
階段の音も 犬の鳴き声も 春の木漏れ日も
心の奥底へと揺るぎなく刻まれる記憶だった
忘れ去った温もりがはるかなる時を超えて蘇る

ぼくがどんなに魂を切り裂かれても
まだこの世界で生き続けた理由が降り注ぐ
遠い昔、ぼくは確かに疑いもなく
どこまでも愛されていたから生きられたんだ

抱きしめられて彷徨い歩いた記憶の熱が
眠っていた無意識の底から這い上がる
静寂の中に響き渡る足音が
この生命に宿ったままでぼくは生きていた

愛されないことで否定され続けた魂は
愛されたという確かな過去によって救われる
どんなに愛を遠ざけようと彷徨っても
結局は根源の愛へと帰着する

 

 

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