ミコノスで巡り会った猫は
ぼくが生まれる前の姿だった
ぼくもあの猫のような曇りなき瞳で
あの人を永遠に見つめ続けた
裏切られてしまうなんて
本当は露ほども考えていなかった
あの人の愛が消え失せるはずはないと
ただ燃え盛るように信じていた
あの人の腕の中でキスをされて
この世にあるはずもない愛に眩暈がした
好きと伝えて好きと返される奇跡が
どれほど尊いかをぼくだけが知っていた
青と白のギリシャの色彩の中で
ぼくが優しく抱きしめてやると
猫は何もかもを忘れたかのように眠った
まるでぼくの愛が永遠であると信じて
確かにぼくは猫を大好きだと慈しんだ
けれどぼくは流浪の民だった
どんなに好きでも猫と旅人は共に生きられなかった
まるで同性愛者と異性愛者のように
(あの人がぼくを愛していたのは事実
けれどぼくたちはきっと別の生き物だった
愛し合っていても共に生きられない運命が横たわっていた
まるでギリシャの猫と旅人のように)