シベリアからの贈り物

 

与えられることだけが
ぼくの生きてゆく習いだった
生かされたことだけが
ぼくのたったひとつの償い

どうかゆるしてください
与えうる何もないこと
どうかわかってください
生かしうるすべもないこと

申し訳なさそうなぼくに
泣き出しそうなぼくに
素朴な大地の人々は答えた
返されないことこそ報いなのだと

あまりに甘すぎる砂糖菓子
生命を与えうる麗しい林檎
ささやかに洗われた鶏の肉
皮のまま食す熟された柿

与えられたものならば
数限りなくあるのに
与えうるものといえば
ぼくの鞄には何もなかった

受け渡され与えられる物質
ぼくは言葉だけを返した
そしてさらに与えられる心と微笑み
ぼくは笑顔だけを返した

机の上にはトルストイの本が広がる
人生論・人はなんで生きるか
まさに目の前に現れる敬虔なこころ
与えることを拒まぬ人々

与えられることそれが
与えることにもつながること
ぼくは決して忘れはしない
シベリアの人々を忘れない

 

 

 

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