果実の冬の眠り
雪の降る音をわすれていました はるか彼方の碧い国に住んでいたから すべての分子が動くのをやめ 時が氷の中へと帰りゆきます ふたつの果実を白い雪がつつみ 永久の眠りについたころ やがて訪れる春の光だけをたより…
雪の降る音をわすれていました はるか彼方の碧い国に住んでいたから すべての分子が動くのをやめ 時が氷の中へと帰りゆきます ふたつの果実を白い雪がつつみ 永久の眠りについたころ やがて訪れる春の光だけをたより…
風の姿に手をのばせば そこは風の始まり 始発の列車に乗り込んで 新しい景色が始まっていく 走り始めた理由を 誰もが知らないのに止められない 真空の銀河を駆けるように 迷いのないまなざしが線路をよぎる &nb…
真っ白な冬の訪ね人 ぼくを迎えに来た 冬を捨て去ったぼくを 目覚めさせるように 動から静へと傾く世界 微かな物音さえも消えていく ぼくは自分の命さえ 消えはしないかと掌の熱を聞いた ロシヤの冬は寒いだろうか…
文字を持てば 過去を残してしまう 過去はやがて捻じ曲げられ 濁った真実が世にはびこる 残すなんて不潔だ もしも文字を持たなければ 言葉は瞬間の炎の中で 美しく始まり終わることができたのに 言葉は霊力を持つけ…
ぼくの果実を優しく包んで 君の生み出したあたたかい温度で ぼくの果実は逃げられなくなる それは君の体温しか知らない 自らですら生きる熱を 確かに持っているはずなのに 他の体温に触れられただけで その人をさが…
みんなが見ていると言わなければ だれも見てくれやしない みんなが聞いていると噂しなければ 浮世は聞き入れはしない 本当に見たいものはなに 本当に聞きたいものはどこ 誰もが自分のことなのに 誰もがわからず惑っ…
わかりあえる人ならば 一生にひとりいれば十分だ 触りあえる果実なら この世にひとつあれば幸福だ 君の果実の色しか知らない そのままで人生を終えたい ぼくの果実の熱しか知らない そのままの君と眠りたい すれ違…
果実を触っているのに 何も感じないなんて不思議だ 今までは果実を触ればば必ず ぼくは感じていたはずなのに ぼくはぼくの果実しか 触ったことがなかったから 果実を触れば必ず ぼくは快楽を感じてい…
わたしは常識を信仰しない わたしは感性を信仰する 疑わしい違和感を感じるものには 常識だろうと進みゆかない この世では 生きにくいことこそ美しい 浮世では 蔑まれることほど尊い 誤りばかりの世の中で 上手く…
どれくらい自分の果実で 遊ぶのと君は尋ねた ぼくは恥ずかしくなって すぐに君から顔を隠した 俺は毎日だと 告白した君の笑顔 まだ誰も触れていない果実を 君は毎日触るんだね ぼくも毎日だよと 君…