冬の捨て人

 

真っ白な冬の訪ね人
ぼくを迎えに来た
冬を捨て去ったぼくを
目覚めさせるように

動から静へと傾く世界
微かな物音さえも消えていく
ぼくは自分の命さえ
消えはしないかと掌の熱を聞いた

ロシヤの冬は寒いだろうか
ユロップの北の言葉と似た言葉たち
暗く静かな音色で話す人々
瞳の底には淡い光の冬が眠っている

星空の中を鉄道が走り抜ける
冷たい水の線路を命が遡上する
ぼくの魂は北へと駆け上がる
冬を捨てた人が冬へ帰りゆく

アイヌの言霊に彩られた大地
銀河の言霊に組み立てられた奥地
陰鬱な歌を歌っていた女はやがて
隠していた炎を冬の中へ灯している

 

 

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