あなたの髪を撫でてあげよう

ぼくたちが大人になれるのは
子供の自分を過去に置き去りにしたからだって
そんなこと誰があなたに言ったの？
本当のことを教えてあげよう

ぼくたちが大人になれるのは
子供の自分を奥底の闇に隠して見えなくしたから
夢の中を旅すればあなたも出会うでしょう
昔むかしに別れたはずの少年の姿に

何歳になってもぼくたちの中には
少年だった自分が聖域の森で遊んでいる
赤子だった自分が天空のゆりかごで眠っている
あらゆる過去が心の中に降り積もっている

大人になったから甘える人が
もう要らないなんて嘘でしょう
あらゆる大人の中に潜んでいる
少年たちは今でも優しく守られていたい

自分よりも強き者たちに慈しまれた時代へ
時を巻き戻して案内してあげよう
自分が最もか弱いことがゆるされた時代へ
本当は舞い戻って眠りたいでしょう

ぼくがあなたを胸に抱きしめて
いつまでも髪を撫でてあげたのは
あなたの中の少年が
ひとりで泣いているのを見つけたから

弱くていいんだよ
惨めでいいんだよ
愚かでいいんだよ
そうやってあなたを根源へと導いてあげよう