何かになりたいという呪いを
かけられてはいないか
何かになることで部品にされる
その命は踏みにじられてゆく
何にでもなれるという日々を
思い出してみないか
どこまでも広がる夕暮れの空の中で
彼方からやって来るバスを待っている
どこかひとつに行かなければならないのだと
いつから教え込まれたのだろう
何かひとつにならなければならないと
誰から植えつけられるのだろう
無限の空に水彩画のように広がりゆく命が
本来の姿を閉じ込められて
たったひとつの点へと収束させられる
天へととける定めを忘れて
ぼくはまだ高校の帰り道
荒野のただ真ん中でやって来ないバスを待っている
不思議な色彩の重なった永遠の下で
ひとつの行き先へと向かうバスはまだ来ない