ぼくはいちど死んだ

 

 

好きな思いが叶わないことを
人は”恋を失う”と書くけれど
あの人への思いが届かなかったとき
ぼくは自分を喪失した気がした

肉体が止まらなければ
死んだことにならないだなんて
一体誰が決めたのだろう
肉体が生きていても魂は死ぬ

大切なあの人を失ったとき
ぼくはこの世の人ではなくなった
一度死んだのに生き続けているかのように
憂世の中を彷徨うのがつらかった

ねぇあなたは本当に
この世に生きている人ですか
本当は死んでいるのに
生きているフリをしていないですか

魂が死ねば必ず再生する
また心が生まれ変わるその日まで
いずれの岸にも属さない幻影となる
ぼくにはぼくの裸体しか見えない

天空の鏡に映し出される真理
よどみながら流れゆく魂の円環
ぼくを此岸から突き落としたのは
ほかでもないぼく自身だった

あの人のいない水の中を移ろいたかった
叶わないのに燃え盛る炎を消したかった
思いがけず導かれた青白い聖域で
ぼくは絶対的な宝石を抱きしめている

 

 

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