生と死の旅立ち

 

この世でどんなに偉大な
旅の出離を果たしても
誕生の瞬間ほどの
天地の返る旅立ちはないだろう

ぼくたちの旅立ちは
常に微小だ
おそれることはない
ひるむことはない

どんな異国へ赴いても
異なる言葉が響いても
異なる顔が囁いても
誰もが同じ世を行く旅人

同じように食べて
同じように眠り
同じように生殖し
同じように死ぬ

どのような異なる大地でも
どのようなはるかなる時代でも
ぼくたちは何も変わらない
立ち向かえば扉は開かれる

子宮が翻りこの世に誕生した
あれほどの衝撃的な旅立ちを
ぼくはまた期待している
それは死という瞬間に

この世から消え去るということは
たとえ生者には静寂に見えても
どれほどに激しく燃え盛る瞬間だろう
生と死の岸辺をはるか照らして

闇から光へ打ち砕かれる生も
有象から無象へと押しやられる死も
野性的な生殖に寄りかかり
忘れかけた時空に立ち止まる

 

 

 

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