旅するだけでは不十分だと
旅の炎の声が聞こえる
旅するだけでは終われないと
古代より彷徨いの歌が聞こえる
誰でも超えられるものを超えては
ぼくたちは誇りを高くした
自分は他の人とは違うのだと
誰もが祈りながら同じ道を辿った
新しい宝石を発見したと奢っては
はるか昔から伝わる泥を見せびらかす
誰にも見えない精霊を見たと嘯いては
限りなく深まる疑いを重ねる
もはや旅するだけでは
語れないことを知った
真理の海へと身を浸し
歩けないと悟った
閉じる眼さえも持たないで
旅人は見抜けるだろうか
かざす腕さえも朽ち果てて
祈りは天を貫くだろうか
ぼくたちは、ぼくたちは
傷ついたままでは終われなかった
妬まれて、謗られて、
疎まれて、急かされて、
ぼくたちは、ぼくたちは
悲しみの最果てへと舟を出す
やがて肉体を失う、心を失う、
魂を失う、旅することを失う
ぼくたちは
ぼくたちは
旅することに終わりを告げて
いつの日か、旅そのものとなれ