旅立ちの光

 

 

旅立ちの日の心を
人はすぐ忘れてしまう
旅立ちの日の光を
つかもうとして逃してしまう

どこにでもあふれていたものを
手放しながら命は進む
いつにでも触れられたものを
通り抜けて先を急ぐ

時は濁流だと言えども
それを眺めた人はいない
時の流れの岸辺に立ち
ありもしない水を思う

目の前にあるものが
いつだって新しいものであるように
目の前にあふれるものたちを
いつの日も美しいと思えるために

ぼくは旅に出るのです
淀んだ世の淵の中では
記憶だけが蓄積し続け
濁りは極みを示しています

昨日を捨て去ることで
明日を手に入れることのないように
少年を抑えつけることで
醜い獣にならないために

物質を捨てて
人間の絆を捨てて
知識を捨てて
残像を捨てて

浮世を捨てて
ぼくを捨てて
あなたを捨てて
命を捨てて

神を捨てて
仏を捨てて
悟りを捨てて
明日を捨てて

たどり着く国はただひとつ

 

 

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