命よりも尊い輝き

異常な人間となってもいいから
あなたを愛したかった
普通の人間であるという安心さえ
あなたのためなら捨てたかった

正常である事を超えて
あなたにたどり着く
この世で生きる自分を見失い
あなたという異郷に達した

ぬるくも虚しかった偽りの安らぎを破り
与えられた果実の熱さをぼくは忘れない
境界線を踏んで立ち入った禁断の森では
あなたさえ正常を脱ぎ捨てて裸体を晒した

愛していると告げた後に
何も返されない生命だと信じていたから
愛していると告げたあなたに
心だけが涙を流した

ぼくのために正常を捨てたあなたを
どんなに時が経っても忘れない
ぼくたちが交わし合った慕情の言葉には
世界を裏切る美しさが宿った

（安らかに生きるための国などいらない
死んでもいいからたどり着きたい
命よりも尊い輝きを見いだしたことで
ぼくたちはこの世の人ではなくなった）