冬のある国へと迷い込んでいた
夏しか来ない国々を通り過ぎて
やがてたどり着いた季節を纏う
祖国と同じ冷たさが訪れる国
彷徨いの魂が根源の土を拾い上げ
その匂いの中にある冬を摘み取る
いつまでも夏の中を生きられないのだと
祖国が充てがう無常が魂を打つ
帰りゆく肉体よ 帰りゆく魂よ
どこにも帰り着く国などないというのに
帰り着く季節はあるのだよと水は言う
ぼくがこの世に生まれついた冬という季節
待っていてくれる人がいるうちに
言葉だけでも帰らせようか
やがてはぼくを待つ人など
誰ひとりいなくなる運命なのだから
消えないで帰りたい人
終わらないで帰りたい国
あなたがいるからぼくは旅ができる
根無し草だと彷徨うことができる