好きな人や恋人になって別れるくらいなら、どうでもいい人として一生あなたのそばにいたかった

 

好きな人や恋人になって別れるくらいなら、どうでもいい人として一生あなたのそばにいたかった

・「どうでもいい人」の重要性

ぼくたちはこの人生の中で数えきれないほど様々な人々と巡り会い、同じ時間を共有し、交流を深めていく。たとえせっかくこの世で巡り会ったとしてもすれ違うだけで終わってしまうような浅き縁の人もあれば、運命の人だと直感で感じ合い愛し合うまでに至る人もいることだろう。ぼくたちが人生で巡り会う人々の中には「好きな人」や「嫌いな人」もいれば、そのいずれにも属さない中途半端な「どうでもいい人」というのも大勢いるはずだ。この一見自分の人生にはあまり大きな意味をなさないように思える「どうでもいい人」というのが、実は人間が生きていく上で意外と非常に重要な役割を果たすのではないだろうか。

 

 

・好きな人のそばにいるとぼくたちは心が惑わされ疲弊する

嫌いな人というのは、なるべく避けたり無視したりして人生を歩んでいけばいいだけなので扱うのは簡単だ。むしろ好きな人や大切な人の方が、ぼくたちが人生を歩む上でかなり厄介な存在となるのではないだろうか。

まず一般的で基本的な話として、自分が好きになった相手からは自分も好きだと思われたいという感情が自然と生じるに違いない。好きになった人から嫌われたいという変わり者が、果たしてこの世にいるだろうか。ぼくたちは好きな人からは好きだと思われたいし、大切な人からは同じように大切にされたい。それゆえに好きな人からぞんざいに扱われたり大切にされていないと感じたら、落ち込んだり悲しくなったり苛立ったりして感情の振れ幅が大きくなって生き辛くなってしまう。好きな人がいるとちょっとしたことで幸福がもたらされることもあるが、同じくらい些細なことで簡単にマイナスの感情に苛まれてしまうことも多いのではないだろうか。

好きであればあるほどに、そして近づき合えば近づくほどに、すれ違ったり傷つけ合う場面も多くなり、好きで大切に思うがゆえにもはや一緒にはいられないと気が付き、一生会えない運命になることも少なくないのでないだろうか。本気で人を愛すれば、必ずそこには苦しみが伴う。別れてしまった恋人たちの中で、その後も気にせずに友達付き合いができるという人はどれくらいいるのだろうか。もうこれ以上感情を振り回されたくないから、別れた後はもう二度と会うことはないという人も多いのではないだろうか。

 

 

・愛するがゆえにぼくたちは愛する人を見失う

しかしこれはよくよく考えてみれば人生におけるかなり大きな損失ではないだろうか。愛し合ったり、大切に思い合うまでに至るということは、愛し合う前の段階からかなり気が合ったり、尊敬できたり、惹かれ合うことのできる友達や親友だったはずだ。そのままの優良な友人関係を維持すれば一生付き合える素晴らしい親友だったはずなのに、それ以上に近づきすぎて、求め合いすぎて、愛し合ってしまったがゆえに、最後には一生会うことができない別れを経験してしまうなんて、なんとも勿体ないような気がしてならない。

本当に気が合う親友なんて、そうそう巡り会えるものではない。どうせなら愛し合うことをせず、それゆえに別れてしまうこともなく、永遠に近づきすぎることのない親友の関係でいた方が人生の満足度は高いのではないだろうか。人を愛することは素晴らしいことだと誰もが思考停止の定型文のように口にするが、愛することによる喪失や弊害というのも人の世にはあるのではないだろうか。

同性愛者は人を愛することによって否定される運命を背負うべきだというのは本当か?

 

・「どうでもいい人」とは一生一緒にいられる

それに比べて「どうでもいい人」というのはどうだろうか。好きな人とは異なり「どうでもいい人」に関しては文字通り本当に心の底からどうでもいいから、何もかもを全く気にすることなく付き合うことができる。好きな人がぼく以外の誰かを好きだと知ったなら嫉妬して心が疲弊してしまうかもしれないが、「どうでもいい人」が誰のことを好きであろうと知ったことではないのでどうぞどうぞ誰でも好きになってくださいという感じで余裕を持って会話することができる。「どうでもいい人」がぼくよりも他の人を優先し大切にしていることがわかっても、ぼくもその人のことをどうでもいいと思っているので悲しい感情や怒りの感情に振り回される必要も全然ない。むしろ大切な人を思う存分大切にしてあげてねという仏のような心境で見守ることが可能となる。

心が全く惑わされることのない「どうでもいい人」といる穏やかな時間は居心地がいいので、結果的に「どうでもいい人」との友人関係はかなり長く続く可能性が高い。これはぼく自身が自分の人生を振り返ってみて気付いた真実である。大好きだった人や、愛し合った人は、好きすぎたゆえに離れ離れになってしまえばもう二度と会うことは叶わないというのに、「どうでもいい人」とは一生仲のいい友人として会い続けられるなんてかなり不可思議な人間関係のシステムである気がしてならない。それならば大好きな人や愛している人など、一生一緒にいたいと願う人ほど、「どうでもいい人」に分類すべきなのだろうか。傷つけ合わずに気楽なままで一生を一緒に過ごしたいのならば、好きな人や大切な人を「どうでもいい人」だと思い込む心の修業が必要なのだろうか。

好きであるということや、人を大切に思うということは、結局のところ自分の心を惑わす執着に過ぎないのだろうか。ぼくたちは尽きることのない執着を心に抱いているから、好きな人や大切な人と二度と会えなくなるという結末を描いてしまうのだろうか。もしかして人生における最も大切なことは、人を好きになることや、人を大切に思うことではなく、むしろ逆に人のことをどうでもいいと無関心に突き放す境地なのかもしれない。

 

 

・ぼくは愛よりも(2022年7月22日)

永遠に会えない未来を覚悟して
あなたと愛を交わしたわけじゃない
愛は縁を結びもするし壊しもする
ぼくは愛よりもあなたが欲しかった

ぼくは愛よりも

 

 

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