知床半島で鮭の遡上を見て、写真を撮り、詩を書きました。
鮭の遡上の詩3選「妨げる柵」「命よりも」「真の敗者」
・妨げる柵
神聖な野生の炎を妨げるようにして、合理的な柵は設けられる。人間達はもはやなす術はないと考え、諦め、停滞し、大人しく支配される。けれどどんなに強く妨げられようとも、あの柵を乗り越え常世へと辿り着く道を、誰もが内側に隠し持っている。いくら肉体を留めても、魂まで抑圧することはできない。
・命よりも
死なない事が最も重要なのだと、僕達はいつも安全な場所へと逃げ込む。傷つかぬ暮らし、安定した蓄え、争わぬ人間集団。けれど死なない事を越えて、傷つかない日々を終えて、その先に生命の意味を見出すとき、人は生きながらにして生まれ変わる。大いに傷つきながら、生命よりも大切な炎を携えてゆけ。
・真の敗者
傷ついた者は敗者だろうか
砕かれた者は敗者だろうか
崩れ去った者は敗者だろうか
死に絶えた者は敗者だろうか
他人がどんなに蔑み見下そうとも
他者の裁きが真理に関わらないことを
燃え盛る自らの根源の炎をまとって
生き抜いた奴らだけが知っている