宇宙の眠り

 

 

「俺に合わせなくていいんだよ」と
優しくかける言葉の裏側には
いつだって本心が透けて見えていた
「俺はお前に合わせる気はないからね」と

人を傷つけないように
繊細に振る舞うのは畢竟
自分自身が傷つかないためなのね
震えて怯えて疑うだけの人生

偽物の薄氷のような優しさは
結局は最後に人を傷つけてしまうのだと
あなたが気がつくためには
人生を深く泳ぐための呼吸器が足りない

他人の瞳の色を気にしすぎて
自分自身の海を泳げなくなる
やがて自分自身という水に絡め取られ
自分自身に息の根を止められる

この世で最も人を傷つけるのは
この世で最も弱い人間なのだと
あなたに物語を聞かせてあげよう
あなたは覚えることだけはするだろう

生きるための核心を持たずに
魂が砂漠の中を彷徨っているあなたが
眠れるように抱きしめてあげよう
宇宙の中の眠りへと沈めよう

 

 

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