月と不死

 

 

どうしてここにいるの
誰を待っていたの
なにひとつ思い出せはしないけれど
あなたは いま ここにいる

1971年1月1月 発行
値段 3300円
丁重に施された厚いカバー
表紙には見知らぬロシア人の名前

段ボールの片隅で眠りながら
ぼくの旅の帰りを待っていたの
それまでは見向きもしなかったあなたを
ぼくはなぜ持ち帰るの

この世界には運命がある
人間にはわからない仕組みがある
人には測れない導きがある
それをぼくは今夜 月と不死から知る

蘇ったのは宮古の海と神々
裸体で泳いだ宇宙の足元に
宝石のようなウミヘビが舞い踊り
岩石をよじ登る越境者をもたらす

ぼくの裸体に美しく潜む果実が
日本の奥底で密やかに祀られている
あらゆる人に宿る根源の正体を
古代の魂たちが指し示す

どうしてここにいるの
誰を待っていたの
なにひとつ思い出せはしないけれど
あなたは いま ここにいる

 

 

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