ぼくが自分の名を知っているのは
かつて幾度となくその名を呼ばれたから
紛れもない愛を込めて 疑いなく慈しむように
ぼくはその名を何度も聞かされた
犬でも自分の名を知るのだろう
猫でも自分の名を認めるだろう
まさにそのようにして獣だったぼくも
その言葉が自らを意味するのだと悟った
お母さんがぼくの名を呼んでいた
お父さんがぼくの名を呼んでいた
おばあちゃんがぼくの名を呼んでいた
おじいちゃんがぼくの名を呼んでいた
大人になって人の群れに出てみれば
誰もぼくの本当の名を知る者はない
ぼくの本当の名は赤子の頃に呼ばれた
あの言葉以外にありはしないのに
おじいちゃんがどこかへ旅立ってしまった
おばあちゃんが自分を見失ってしまった
ぼくの本当の名を呼べる人が消えていく
ぼくの本当の名が世界から消えていく
人々はぼくを部品に仕上げるために
苗字と名前を冷たく突きつける
それはぼくを表しはしない
ぼくの魂の色を指し示さない
本当の名でぼくを呼んでください
ぼくが完全に部品として組み込まれる前に
愛と慈しみを以て与えられたあの名を
覚えている誰かがこの世にいる限り