軌道よ 軌道よ
運命の軌道
おまえがどこへ行くか知っているならば
人は生きては行かぬだろう
外された軌道
遺された軌道
廃れた軌道
荒野に浮かぶ軌道
あてもなく敷かれた軌道の上を
今日も列車は運んでゆく
行き先を告げぬことが
鉄道の仕事であると言わんばかりに
窓の外に広がる水の軌道
高い空にそびえる星空の軌道
暗闇に突如として現れる火の軌道
ひとつとして同じ姿のものはない
運ぶのはまだ生まれぬ魂
もしくはもう終えた後の命の輝き
どこまでも走り続けることを
見知らぬ旅人が教えて消える
わたしには過去があるのか
わたしには明日が来るのか
羊水の魂たちは問いかける
いかようにもイマを生きろと
底知れぬ深さをたたえる湖が
列車の右側に姿を現わす
果てしなく澄んだ青色に燃える風
軌道は水の上をやがて駆けてゆく