光 〜傷つけられた者たちへ〜

 

 

誰かがあの子におそれを
植え付けることさえなかったら
誰かがあの子の運命を
咎めることさえなかったら

いいえ

誰もがあの子におそれを植え付けた
植え付けない者などこの世になかった
誰もがあの子を責めることをやめなかった
その言葉は雨のようにあの子へと降り注いだ

それを正しいことだと誰もが胸を張っていた
間違っているものなどないと肩を並べて歩いた
もはや誰も
自らを罪人などにしなかった

あの子におそれを植え付けることが
つながれたこの世の習いだった
あの子に自らを咎めさせることが
人々の生きている証だった

どうしようもなく植え付けられた者たちよ
どうしようもなく傷ついた者たちよ

定められた海鳴りの音を聞いて
この世にはない海を超えて行こう
なにひとつ持つものはない
誰ひとり伴うものはない

おまえだけに与えられた海がある
他の誰にも超えられない海がある

海の色も海の音も
みなそれぞれに違うけれども
海がどこかでつながり合うことを
果てしない闇の彼方に祈って

植え付けたものたちを憎みはしない
傷つけたものたちに復讐を誓わない
植え付けた闇さえも突き抜ける光を
傷つけた意味さえも打ち破る炎を

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ