幽玄の鏡

 

 

何ひとつ失くさない
命などあるものか
すべてを失くして
すべては生まれる

何ひとつ愛さない
命などあるものか
愛から滅びて
すべては始まる

行方を知らされない魂だけが
抱くことをゆるされる羅針盤がある
孤独と絶望が降り注ぐ代わりに
受け取ることをゆるされる澪標がある

絶えることなく泳ぎ続けてゆけ
たとえ途上で諦め倒れても
一生は引き継がれ物語は紡がれる
いかようにも炎は引き継がれる定め

愛することにより身を滅ぼされ
喪失により何もかもを奪われても
はるかなる根源に耳を澄ませば
深い森の中から清流のせせらぎが聞こえる

旅立つ者たちに神聖な風を
異物と成り果てて自分を受け取る
帰れない者たちに幽玄の鏡を
自我は砕かれ真理は目醒める

何ひとつ失くさない
命などあるものか
すべてを失くして
すべては生まれる

 

 

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