夜の火車駅はむき出しの心が隠れ住む
昼間にはこの世にたどり着けなかった思いが
寂しさという温度を連れ込んで
やがて暗闇の線路へと発進する
どこへと流れ着くのだろうか
知っているのに誰もが不安になる
本当に行き着くための軌道だろうか
間違いは都会の光に紛れてゆく
目覚めた時の窓の景色を
想像できる者はいない
ひとつ向こうの駅のありかを
正確に辿れる者はいない
流れゆく旅人の心のように
夜行列車は見知らぬ夢を伝う
ほんのひととき訪れる寂しさが
列車の微かな振動に共鳴する
明日のぼくの姿を誰も知らない
明日の己れの姿を誰も見えない
運命が運んでいく流れに身を任せ
見えない透明な線路の上をゆく旅人