透明・祖国
どうでもいい出来事に 絡まって動けない浮世は蜘蛛の糸 抜け出せばたちまちに おそろしい怪獣が食いちぎる そんな呪いの言葉を真に受けて 動けずにいた小動物の群れ 迷える魂を支配しているのはいつも 怯えて生きて…
どうでもいい出来事に 絡まって動けない浮世は蜘蛛の糸 抜け出せばたちまちに おそろしい怪獣が食いちぎる そんな呪いの言葉を真に受けて 動けずにいた小動物の群れ 迷える魂を支配しているのはいつも 怯えて生きて…
旅する者の瞳はこの世にはない どんなに呼びかけても応えは返らない 閉ざされた深い異国の陰で あなたの心は安らかに眠っている 傷つき果てた先に旅立ったのならば 旅立つという理由は炎に近い 問いか…
ぼくは異国を旅することができない どんなにはるか遠くまで 肉体を旅立たせても 心まで旅立たせることはできない もしかしたら誰もが そうなのかもしれないわ あらゆる心はひとところに留まり 旅立ち…
マッターホルンへ行く者は この世の歩みを忘れている マッターホルンへ行く者は 自分の生きることを忘れている 本当は手放したかったものを 手放して旅立ちなさい あらゆるものが白い世界へ 天を貫く…
遠い過去に海に包まれた幻影が わたしにも聞こえる あなたにも聞こえますか わたしの海とあなたの海はつながる 関わらないように見えるものたちが 根の底で結ばれている 巡り会うはずもない心の粒が …
水がぼくらに光を投げかける 誰かの感性がそれに応える 応えられぬ清流のまばたき 誰にも見向きもされずに消える 波紋があてもなく広がる 澄んだものが動きもせずに輝く ぼくの感性がそれに応える 水…
未来を思い煩わなければ この世では生きられない 遅ければ遅いほどに 自らが損をする浮世だ 未来宛の自分に チケットを買ってゆく アムステルダムまでのバスを あなたへと届ける その先にあるものは…
モーゼが大海をふたつに分けるように 思想が人の間を深く切り刻んでゆく まつりごとの果ての岸辺に血はながれ ありもしない境界に惑わされて終わる なにによって人はわけられる 言語血筋宗教思想肌 なぜに人はこの世…
スイスで見つけた青い宝石 それは高く天へと舞い上がり 人の手には届かない宝石 神々の白い山脈を行き来する あるのかないのかわからない点滅 どちらにせよ知らされる澄明 有象と無象を旅するための透…
知らない間に氷の上を 歩いていました疑いもせずに 土の上を歩いていると 思い込んでいたんです この命は土の上でしか 生きられないと信じていました それゆえに土を尊く感じて それゆえに土を信仰し…