知らない間に氷の上を
歩いていました疑いもせずに
土の上を歩いていると
思い込んでいたんです
この命は土の上でしか
生きられないと信じていました
それゆえに土を尊く感じて
それゆえに土を信仰して
土の上以外に住処を
作ったこともないくせに
土の上がもっともふさわしいと
かたく決め込んでいたんです
それなのに知らないうちに
氷上を旅していました
ここはどことも知れない見知らぬ駅
白い山脈が神々の化身として聳える
氷の上を歩いていると知ってから
怯えました悲しみましたおそれました
それでも少しも経たぬうちに
ここも悪くないとわかったんです
土の上でしか生きられないのは
わたしの思い込みでした
この魂はいかに流転しても
応じて馴染みの里へと帰らせる源流
~生から死へと不意に転じる雪崩
それを意識して対応するものはない
死から生へと突如として貫く樹氷
その旅立ちを記憶しておくものはない~
この命が気づかぬうちに終わっても
わたしは炎を燃やし続けるだろう
氷の上では生きられないというのは
生きることしかできないものたちの戯言