浜崎あゆみと宇多田ヒカルって結局どっちが勝ったの?!
浜崎あゆみA BESTと宇多田ヒカルDistanceが同時発売された2001年3月28日は日本で最もCDが売れた日だった
目次
・2001年3月28日は日本で最もCDが売れた日
2001年3月28日は、日本で最もCDが売れた日だという。この時代を生きていた人ならば、なんとなくなぜこの日にそんなにもCDが売れたのが思い当たる人もいるだろう。2001年3月28日は当時人気絶頂だった2大歌姫、浜崎あゆみのベストアルバム「A BEST」と宇多田ヒカルの2ndアルバム「Distance」が同時発売された日だったのだ。
宇多田ヒカルと言えば1998年発売のデビューシングル「Automatic」から売れに売れまくり、翌年発売された1stアルバム「First Love」が800万枚以上を売り上げ日本歴代1位の記録を打ち立てたことから、2ndアルバムへの期待が否が応でも高まっていた。
一方で浜崎あゆみは1998年デビュー当時はそんなに売れていなかったが着実に人気を集め、1stアルバム「A Song for XX」はミリオンセラー、2ndアルバム「LOVEppears」はダブルミリオン、3rdアルバム「Duty」はおよそトリプルミリオンとその人気を不動のものとすることに成功していた。
宇多田ヒカルは作詞作曲も手がけその音楽的才能が卓越していたのは誰もが認めたところであるのに対して、浜崎あゆみはファッションやメイク、可愛らしい顔つきなどその外見が同性代女子から圧倒的な支持を受けていた。そんな人気絶頂の2人の歌姫が2001年3月28日にアルバムを同時に発売するというのだから世間が騒がないはずがなかった。
その当時の熱気をぼくも幼いながらに覚えている。大阪の高島屋のCDショップでは店の外に浜崎あゆみと宇多田ヒカルの特別ブースが並んで設けられ、モノクロの浜崎あゆみの涙が印象的なジャケット写真とミントグリーン色彩を背景とした笑顔の宇多田ヒカルのジャケット写真が印刷されたCDが大量に堆く積まれていた。後にも先にもあんな奇妙な光景をぼくは見たことがない。
もちろん注目されていたのは、ライバル同士であるとも言えるこの2人の歌姫のどちらがより多くのセールスを叩き出すかということだった。浜崎あゆみと宇多田ヒカル、果たしてどちらが勝負に勝ったのだろうか。
・浜崎あゆみベストアルバム「A BEST」の収録曲
1.A Song for XX
2.Trust
3.Depend on you
4.LOVE ~Destiny~
5.TO BE
6.Boys & Girls
7.Trauma
8.End roll
9.appears
10.Fly high
11.vogue
12.Far away
13.SEASONS
14.SURREAL
15.M
16.Who…
・宇多田ヒカル2ndアルバム「Distance」の収録曲
1.Wait & See 〜リスク〜
2.Can You Keep A Secret?
3.DISTANCE
4.サングラス
5.ドラマ
6.Eternally
7.Addicted To You (UP-IN-HEAVEN-MIX)
8.For You
9.蹴っ飛ばせ!
10.Parody
11.タイム・リミット
12.言葉にならない気持ち
13.HAYATOCHI-REMIX
・浜崎あゆみ「A BEST」と宇多田ヒカル「Distance」売上対決は、宇多田の勝利だった
2001年3月28日の発売日だけで、浜崎あゆみベストアルバム「A BEST」は161万枚、宇多田ヒカル2ndアルバム「Distance」163万枚を売り上げ、合わせて320万枚以上を売り上げたこの日は、日本人が最もCDを買った日として伝説となっている。最終的には2001年年間で、浜崎あゆみベストアルバム「A BEST」は424万枚、宇多田ヒカル2ndアルバム「Distance」440万枚を売り上げた。
2001年アルバム売り上げで浜崎あゆみは年間2位、宇多田ヒカルは年間1位に輝き、結果的には僅差で宇多田ヒカルが勝利することとなった。しかしそのどちらもが素晴らしい作品であることに変わりはないだろう。
・浜崎あゆみ「A BEST」と宇多田ヒカル「Distance」批評
ぼくはどちらのアルバムも持っているが、アルバム全体として統一感があって完成度が高いと感じるのは浜崎あゆみ「A BEST」の方だ。当時の浜崎あゆみの孤独な歌詞の世界観が、「A BEST」のモノクロの涙のジャケット写真とよく合っているし、当時の彼女の切実で泣き叫ぶような澄んだ高音が、歌詞の中に立ち現れた孤独をより一層痛切に表現しているようで美しい。特に1曲目A Song for XX、2曲目Trust、3曲目Depend on youはNew Vocal & Mixとして2001年の歌声で歌い直されており、その切ない歌声が心に迫ってくるようでたまらない気持ちになる。1998年のか細い淡白な声ではなく、2001年の痛切で感情的な歌声で1曲目A Song for XX、2曲目Trust、3曲目Depend on youの名曲が歌い直されこのベストアルバムに収録されたことには大きな意味があるように思われる。また聞いていると8曲目End rollも確実に2001年の歌声で再収録されているが、New Vocal & Mixと歌詞カードに記載されていないのは不思議な現象だ。
アルバム全体の統一感としては浜崎あゆみ「A BEST」の方が完成度が高いと感じられるものの、宇多田ヒカル「Distance」はそれぞれの楽曲の完成度がズバ抜けて高くて聞き応えがある。シングル曲でもある1曲目Wait & See 〜リスク〜、2曲目Can You Keep A Secret?、7曲目Addicted To You (UP-IN-HEAVEN-MIX)なんか緻密な作りで完成度が高すぎて、どんなに時代が経っても新しい感動と共に聞き続けることができる素晴らしい作品だ。しかしシングル曲の気合が入りすぎて、シングル曲の完成度が高すぎて、アルバム曲がそれに並ぶほどの出来栄えになっていないので、アルバム全体を通して聞くとチグハグな印象を受けてしまう(個人的な感想)。
もちろん素晴らしい音楽作品を作り出す才能は宇多田ヒカルの方がはるかに優れており、それは時代が経った2021年現在の世の中からの支持のされ方にも如実に表れていることだろう。2021年になっても宇多田ヒカルはその瑞々しい才能と深い洞察力を枯らすことなく、他の人には作り出せないような独創的で新鮮な音楽を常に発表し続けており、いつまでも注目したいアーティストのひとりだ。ぼくの好みとしては、アルバム全体を通して自然な統一感がある「ULTRA BLUE」「Fantome」が宇多田ヒカルのオリジナルアルバムで最高の作品だと感じている。
2001年3月28日に伝説を作り上げた2人の歌姫は今でも精力的に活動を行なっており、どんなに時代が変わろうとも同じ熱量で素晴らしい音楽作品を世の中に届けてくれることを願ってやまない。
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