野性の果実 〜ぼくがぼくではなくなるとき〜

 

 

止めようと思っても
とめどなく溢れ出てしまう
ぼくの肉体なのに
ぼくの言うことを聞かない

掌で抑え込んでも
天を向き隆起してしまう
ぼくの果実なのに
もはやぼくの肉体ではない

ぼくがぼくでなくなるのを知るとき
ぼくは森へと帰ってしまう
ぼくがぼくであることを見失うとき
海の彼方へと旅立ってしまう

君だけがぼくを野性へと呼び戻す
次第に固く熱を帯びる果実
何度も震えて潤いを保つ先端
自然に口から漏れ出てしまう声

なにひとつとしてぼくのものではない
ぼくの肉体がぼくを通り過ぎて
限りない森へと達してしまう
はるかな海へと交わってしまう

動物のように言葉を失くして
淡い光の中で抱きしめ合った
君の果実もぼくと同じように
君の言うことを聞かないことを知っている

植物のように無意識のままで
裸体を互いの鏡へ映せば
もう戻れない麗しの楽園
ふたりの青い液体が呼び合う

 

 

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