ぼくはおまえに会うたびに髪を撫でた

 

 

ぼくはおまえに会うたびに髪を撫でた
おまえが生きていてくれることが嬉しくて髪を撫でた
ぼくはおまえに会うたびに髪を撫でた
これまで生きていてくれてありがとうと心の中で慈しんだ

ぼくたちは生きている限り
いずれどこかで別れ合う運命
ぼくの人生におまえがいなかったことはあるけれど
おまえの人生にぼくがいなかったことはない

もしもぼくがいなくなっても
おまえだけがひとり生きていけるように
何ひとつ失くした心地がしないように
ぼくはおまえに会うたびに髪を撫でた

ぼくがいなくなってもぼくをふり返らないように
ぼくがいなくなってもぼくのことを忘れられるように
ぼくがいなくなってもぼくの精霊がおまえを守るように
ぼくはおまえに会うたびに髪を撫でた

ふたりで一緒に生きていくことが
もはやできなくなる青白い夜が必ず来る
忘れの衣がお互いの魂を覆い隠すだろう
ただひとつ髪の上に宿ったぬくもりを残して

 

 

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