イマの岸辺

 

自分自身の昔の言葉が
あまりに美しく胸に響くから
まるで誰か知らない人が
書いた言葉に思われる夜

嘆かなくていい
うつむかなくていい
いつしかこのぼくの心も
過去へと流れ込むだろう

過去とは美しいイマの別名
すべての過去はイマだったのに
美しい化粧をこさえられ
偽物のイマを映し出す

燃え上がるイマが美しいと気づくのは
遠くから眺める瞳を持ったとき
炎のようなイマのさなかでは
もがくように言葉を紡ぐしかない

ありふれた感情を
ありふれた言葉で
伝えようとしても伝わらない
ぼくとあなたは違う人間

それなのに悠久の丘から
共に昔を眺めていると
途端に美しい気持ちに襲われる
はるか彼方の光へ憧れを

過去にならないイマはどこなの
遠くから眺める愚かな人々が
美しいと嘆かないイマはどこなの
どこまでも変わらないイマの肖像

まさにイマ燃え盛るように
瞬間と瞬間の間に存在のすべてを
この心にひどく焼き付けてしまうような
かけがえのないイマはどこなの

過去になるものばかりだ
明日を憂うものばかりだ
そんなもの要らない
真性のイマだけに触れたい

彷徨うほどに遠ざかるだろう
さがすほどに見失うだろう
ぼくの中に燃え盛るイマは
過去と未来を脱ぎ捨てて

美しい森を駈けるだろう
美しく天を貫くだろう
なつかしがらない清らかな心だけが
見透かす炎の美しい熱

 

 

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