まれびとは異界へ

 

 

まっすぐに育つはずだった
自己愛の幹は
方々に散り散りとなりて

隙間なく埋め尽くされるはずだった
正当化の枝は
おかしな方向を象って

この世にはない方角を示し始める
この世に生まれるはずだった自分を愛する心を
膨大な量のままで
彼岸へと逃がして

この世にはない色を呈し始める
この世で栄えるはずだった自分を正しいと思う心を
どこにもない透明な
無限の国へとのばして

ぼくはこの世の人ではない人になる
この世で生きていたかった思いだけを残して
ぼくは旅立ちの人になる
もはや誰もぼくに触れない

植えつけられたおそれは
少年の祈りを削り取って
淡い光でできた翼は与えられ
思いもよらない創造へと導く

どうしようもない運命は
少年の心を彼方の国へと運んで
もはや誰もたどり着けない
異国のまれびととなる

 

 

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