ぼくの話す声がある
ぼくの笑う声がある
ぼくの歌う声がある
そのどれとも違う声を君は聞く
君のささやく声がある
君の尋ねる声がある
君の告げる声がある
そのどれとも異なる声をぼくは聞く
果実をそっと触られた時に
自然と放たれる発声は
ぼくを幼い動物にする
ぼくも知らないぼくの声がある
果実を強く握られた時に
君が紡ぎ出す波の音(ね)は
小刻みに震えては甘える
君の強さが砕けることを知る
声につられて生まれくる
生きているための熱い息が
絡まり合いながら加速する
止められない原始のならわし
誰から教えられなくても
ぼくたちは巡り会った
誰から教えられなくても
ぼくたちは果実を触った
まるでそうなることが
生まれる前から決められていたように
したたり落ちる青い液体
声が止まって息だけが漏れる