シチリアの大地
海であるのか 空であるのか わからない色どりが アグリジェントの宙に浮いている イタリアという国の深さを 異国にいるぼくたちは計り知れない なにひとつ知らない顔をして 明るさだけを照らされてい…
海であるのか 空であるのか わからない色どりが アグリジェントの宙に浮いている イタリアという国の深さを 異国にいるぼくたちは計り知れない なにひとつ知らない顔をして 明るさだけを照らされてい…
この世の果てしない穢れを注がれて ぼくは浄化のための旅に出る この身を清らかなるものに帰すまでは 決して浮世へと戻りません なぜ旅に出るのですかと 瞳の濁った者は問う 旅に出なくても生きられる…
光が水に乗り天空を飛び散る 美しき白亜の泉 プレトリアの泉 ギリシアの神々が運び伝える 時を超えても変わらない人間の肉体 誰の目にも美しいのは ただ肉体だけだと 刻まれる彫刻のなだらかな群れ …
たとえすべての人間が おまえひとりの悲しみさえ担わなくても おまえはすべての人間の 悲しみを背負う翼であれ たとえ世界のすべてが おまえを無視して見向きもしなくとも せめておまえだけは世界の片…
平野の穏やかな水を憎んでいた 安らかな時を嘆いていた もっともっと胸に迫り来る鼓動を もっともっと差し迫る激流を 人間はいつしか安寧を求めて 山脈を退き平野に群がる あらゆる都会は平野の中の砂…
あらゆる問題提起にさらされて ぼくたちの生命は成立している 群れの膿瘍の中で社会の風を吸い込み どこまでが自分でどこまでが他人 すべての人間の問題を受け止めていたら 命がどんなにあっても足らないわ 真実にこ…
何かになりたいという呪いを かけられてはいないか 何かになることで部品にされる その命は踏みにじられてゆく 何にでもなれるという日々を 思い出してみないか どこまでも広がる夕暮れの空の中で 彼方からやって来…
異物が穢れだというのなら 全ての他者は穢れとなろう 孤独という純白をさすらいながら 純粋という色彩をさぐっていく すべてのものはつながっているから 森羅万象はこの世で絡まり合い 関わり合わない…
青い液体の満たされた ぼくの果実の皮を密かに剥いて いつしかそれを誇りにしては 少年の夢は揺らめいていた 何度だって天に向かって立ち上がる 堂々とした美しいその姿の先端は 世界へ青い液体を放出…
ゆるされない罪をまとって 生きているのなら思い出して おまえを深き罪の淵にあると 裁いたものは真実の権化か 要らない人間だと打ち捨てられて 傷ついたのなら思い出して おまえを要らぬと吐き捨てた…