山の民族は海の民族にはなれない
それを知っていたから海へととけ込んだ
生まれる前から決まっているものはなに
生まれてから決められたものはなに
どんなに祈っても叶わないことがある
それを知っていたから碧と共に生きた
愛することによって覚えたことはなに
愛することによって失うものはなに
ありのままの裸体をあなたに差し出せば
まるで生まれる前のようにぼくは浮遊する
ぼくが人間になる前の国へ
ぼくがあの人を愛する前の日々へ
もう一度月の満ち引きに導かれ
あらゆる世界を海へと任せよう
夜の闇に浮かぶ月までの道
歩いていけばたどり着ける異国
絶海へと立ち向かう孤独な生命
絶唱を伴いながら海に祈る歌人
天と繋がれたと知ったその日から
ぼくはあなたの生まれになったの