海へと駆け下りる坂を終えて
ぼくたちは巡り会った
太古から生き延びたあなたを抱いて
ひとつまたひとつと重ね合った
生きている者たちとしか
言の葉を交わさないことの虚しさよ
たかが生きることしかできない
浮世の生命たちの浅ましさよ
誰もさがそうともしない海の欠片を
ぼくは語らずに受け取った
見えないもの聞こえないものを悟って
指先が光たちの風を敬った
あの世からやって来た波たちが
この世に留まる日々をさらってゆく
あの世でもこの世でもない碧色が
ぼくたちの色覚を無に返す
はるか彼方の時空を生き抜く者の言葉は
一瞬で死にゆく人間の耳には届かない
何も語りかけないと思い上がりを描く者が
星たちの瞬きのように命を点滅する